現代の日本では、時間にして2.5分に1組の夫婦が離婚しているというデータがあり、昭和のころと比べると離婚率は上昇しています。
結婚してマイホームを購入したにもかかわらず離婚を迎えてしまった場合、どのように財産分与をすれば円満に解決できるのでしょうか。
現金や有価証券などであれば、すぐに現金化して分配することができますが、マイホームという不動産の場合は簡単に分配できません。
ましてや、住宅ローンを利用している場合は頭を悩ませてしまうでしょう。
離婚は夫婦や子供にとって精神的負担が非常に大きい・・・と言われますが、重要なことをきちんと取り決めておかないと後々大きなトラブルに発展するケースもありますので、注意が必要です。
今回は、そんなお悩みが減らせるよう、離婚の際の財産分与で不動産売却時に注意するべきことを解説します。
離婚の際の財産分与とは?
基本的に財産を50%ずつ分け合う
財産分与とは、結婚生活において夫婦が協力して築いた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することをいいます。
法律でも、「離婚の際には相手方に対し財産の分与を請求することができる」と定められています。(民法768条1項)
財産分与の割合は、夫と妻がそれぞれどのくらい財産の形成に貢献したかが考慮されます。妻が専業主婦の場合30~50%、共働きの場合50%といわれていますが、最近では専業主婦の場合も原則50%ずつ分配することが多くなっています。
ただし、夫が大企業の代表取締役などの要職に就き、年収や財産が多額の時は、妻の財産形成貢献度が低いと見なされ、50%の分配が認められないケースもあります。
しかし、一般的にはほとんどのケースで50%ずつということになりますので、よく覚えておきましょう。
判断が難しい場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
財産分与の対象となるものとならないもの
財産分与の対象となる財産とは、夫婦が結婚生活の間に一緒に築いた不動産を含む財産のことであり、清算的財産といいます。
具体的には、
- 土地
- 建物
- マンション
- 株などの有価証券
- 生命保険
- 預貯金
- 貴金属
- 家財道具
- 家電製品
などが挙げられます。
清算的財産を分けることを清算的財産分与といいます。
預貯金や不動産(土地・建物・マンション)など、夫の単独名義になっていたとしても、清算的財産であれば妻にも50%の財産を受け取る権利があるので、きちんと清算的財産分与をしなければいけません。
一方で、結婚前に夫と妻それぞれが所有していた財産は財産分与の対象となりません。また、結婚後であってもそれぞれの親から相続した財産は、結婚生活において夫婦が協力して築いた財産ではないため、財産分与の対象とはなりません。
住宅ローンが残っている不動産の財産分与
結婚生活において購入したマイホームの住宅ローンが残っている場合、どうしたらよいのでしょうか?
マイホームを売却する場合
一般的には、住宅ローンが残っているマイホームを売却して、残ったお金を分配しますが、詳しく見ていきましょう。
まず、住宅ローンの残債がどのくらいあるのか確認します。
次に、インターネットの一括査定サイトで複数の不動産業者に査定を依頼するか、固定資産税納税通知書などで固定資産評価額を見て、どれぐらいで売却できそうか調べてみましょう。
売却できそうな価格と残債を比べて、価格の方が残債より大きい(アンダーローン)場合は売却して残ったお金を分配します。
残債の方が価格より大きい(オーバーローン)場合は、預貯金などの現金からそれぞれが50%ずつ負担して金融機関に返済します。
現金がなければ、このまま住宅ローンを支払い続けて、売却できそうな価格と残債が近づくまで、夫婦のどちらかが住み続けるのが現実的な方法ですが課題も残ります。
マイホームを売却しない場合
マイホームを売却しない場合は、
- ローンの負担や不動産の所有権をどちらが持つのか
- マイホームを受け取らない方は、他にどの程度の現金などの清算的財産を受け取るのか
- どういったリスクが残るのか
など、夫婦間できちんと協議し、公正証書などの形で残しておくことが大切です。
共有名義と連帯保証人の確認は必須
夫名義のマイホームの住宅ローンの連帯保証人が妻、またはその逆になっているというケースはよくあります。
あるいは、共働きであれば年収に応じて共有名義となっているケースも多いのではないでしょうか。
妻が共有名義か連帯保証人になっているか確認する
いずれのケースも、連帯保証人にどちらかがなっているのか、不動産の共有状況はどうなっているのか、必ず調べましょう。
連帯保証人についてはローン契約書や金融機関で確認できますし、共有状況は不動産の登記事項全部証明書を法務局で取得すれば確認できます。
夫婦共有名義のケースであれば、当然に売却という方向に話が進みますが、どちらかが連帯保証人の場合は協議が必要です。
夫が単独名義でマイホームを購入し、住宅ローンを組む場合、金融機関は債務者に保証料を負担してもらい連帯保証人をたてないことが多いのですが、保証料というコストとの見合いで、債務者が連帯保証人に妻をたてるケースもあります。
たとえ妻が専業主婦であったとしても、配偶者は将来的に必ず相続人になるため、妻を連帯保証人にするケースがあるからです。
共有名義か連帯保証人になっているなら売却がおすすめ!
離婚をする際に、住宅ローンが残っているマイホームなどの不動産を売却しないケースは以下の3つになります。
それぞれについて、例を挙げて説明いたします。
夫名義の不動産、夫が住宅ローンの債務者で夫が住み続ける
この場合は、不動産の時価からローン残債を引いた差額が清算的財産となり、財産分与の対象となります。
差額がマイナスとなった場合も「負の財産」として清算的財産となります。
夫名義の不動産、住宅ローン債務をどちらも妻に変更する
金融機関で妻が新規で住宅ローン融資を受けることで、夫の住宅ローンを一括返済し、名義を変更します。ただし、この場合は妻に正社員としての安定的収入があり、金融機関の審査に承認してもらう必要があります。
夫名義の不動産、夫が住宅ローンの債務者で妻が住み続ける
不動産は夫の名義のまま、住宅ローンも夫が払い続け、預貯金などの相応分を夫が多めにもらうといった方法で財産分与し、現実的にはこのケースが多く見られます。
ただし、夫がローンを滞納してしまった場合、抵当権行使などによりマイホームを差し押さえられてしまうなどのリスクが残ります。
また、このケースで妻が連帯保証人の場合、夫がローンを滞納した場合に、連帯保証人である妻に支払いを請求されるリスクもあります。
そういったリスクを避けるために、連帯保証人を外れたいという希望は非常に多いのですが、連帯保証人を外すためには、
- 別の不動産を担保として提供する
- 他の金融機関で住宅ローンを組み直す
- 金融機関が認める別の連帯保証人をたてる
などの方法を取る必要があり、現実的には大変難しいといえます。
このようなことを考えると、離婚する際には、共有名義の場合はもちろんのこと、どちらかが連帯保証人になっている不動産も売却して清算することをおすすめします。
オーバーローンの場合は債務が残ってしまいますが、売却前に比べれば債務額は圧縮できます。
例えば、売却価格が1,500万円で住宅ローン残債が2,000万円とすると、売却しなければ2,000万円の債務を共有するか連帯保証しますが、売却すれば500万円分だけで済むのです。
このため、経済的にも精神的にも負担が軽くなるメリットがあります。
離婚時の財産分与で不動産売却時に注意するべき4つのこと
- 住宅ローンの残債があると抵当権が残って売れない
- 譲渡所得税は名義人の負担になる
- 離婚で不動産を妻に財産分与する場合の税金
- 相場を確認するために一括査定サイトを活用する
住宅ローンの残債があると抵当権が残って売れない
住宅ローンを利用してマイホームを購入する場合、ほとんどの人が金融機関から住宅ローンの融資を受けます。
金融機関は住宅ローンの担保として、マイホームに抵当権を設定します。
抵当権とは、万一ローン返済を滞納した場合に、優先的に抵当権を設定した不動産を処分して債権を回収できる権利のことです。住宅ローンの債務者は住宅ローンを完済しなければ抵当権を抹消することはできません。
また、その不動産を売却する時は、売主(所有者)は引渡しと同時に抵当権を抹消する義務を負います。
ただし、売却価格が住宅ローンの残債より少なかったときは、抵当権を抹消することができないため、不足分を自己資金で補填して返済する必要があります。
また、不動産を売却する時は、仲介手数料や司法書士費用などの諸費用もかかりますので、事前に資金計画をきちんと立てておきましょう。
譲渡所得税は名義人の負担になる
不動産を財産分与する場合、財産を渡す側には、譲渡所得税が課税されることがあります。なお、譲渡所得税は名義人の負担になるので注意してください。
譲渡所得税は、不動産の売却価格から購入価格と諸経費を差し引いた譲渡益に対して課税されます。
【譲渡所得税の計算方法】
譲渡所得を算定する時は、売却価格から購入価格のみならず、購入時にかかった諸経費と売却時にかかった諸経費の合計を差し引くことができます。(ただし、購入時の建物価格は減価償却する必要あり)
また、譲渡所得税の税率は、譲渡した不動産の所有期間に応じて異なります。
譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得となり、税率は以下の通りとなります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
短期譲渡所得 (所有期間が5年以下) | 30.63% | 9% |
長期譲渡所得 (所有期間が5年超) | 15.315% | 5% |
なお、この表には平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が加算されています。
離婚で不動産を妻に財産分与する場合の税金
離婚に際して、夫名義のマイホームなどの不動産を妻に財産分与する場合の税金について説明いたします。
離婚前に分与する場合(贈与税の配偶者控除)
婚姻期間が20年以上あり、前年以前にその配偶者からの贈与について贈与税の配偶者控除を受けたことがなければ、マイホームなどの居住用不動産の価額から2,000万円を控除できます。
2,000万円控除後に残額があれば、基礎控除額110万円も控除できるため、最大で2,110万円までは無税で贈与できることになります。
離婚後に分与する場合(居住用財産の3,000万円特別控除)
マイホームなどの居住用不動産を夫婦や親子などの親族以外に売却すれば、所有期間に関係なく譲渡所得から3,000万円を控除することができます。
つまり、譲渡益が3000万円までの場合、税金はかかりません。
加えて、マイホームなどの居住用不動産を売却した年の1月1日時点で、その不動産の所有期間が10年以上の場合は、3,000万円控除後の残額に対して、長期譲渡所得税は所得税10.21%・住民税4%に税率が軽減されます。
次に、財産分与により不動産を受け取った側の税金についても説明いたします。
通常、離婚に際して財産分与として不動産を受け取った場合、原則的には贈与税や不動産取得税などの税金は課税されません。
ただし、税務署に財産分与により受け取った財産が多すぎると判断された場合や、偽装離婚などの不正な離婚だと判断された場合は、贈与税が課税される可能性があります。
また、不動産取得税についても、離婚の原因が夫か妻のどちらかにあり、相手への慰謝料の意味を含めて財産分与が行われるケースは、不動産取得税が課税されます。
この場合、不動産を受け取った側は、所有権移転登記の際に登録免許税も課税されますので注意しましょう。
なお、これらのケースでも離婚の協議内容によって財産分与した側が支払う、ということもできますので、よく話し合いましょう。
相場を確認するために一括査定サイトを活用する
財産分与する不動産については、まず、不動産ポータルサイトや国土交通省が運営する公的サイトなどで、不動産の相場などを調べて自分なりの価値基準を持ちましょう。
そのうえで、インターネットの一括査定サイトを利用して、複数の仲介業者に一括査定を依頼します。
売却する場合は各仲介業者の査定価格をよく確認し、売却しない場合でも不動産の現在相場を客観的に判断できるため、一括査定サイトの利用をおすすめします。
査定の回答をくれた各仲介業者のホームページなどを見て、その仲介業者の得意分野や担当者のスキルなどを確認し、実際に連絡を取ったうえで、売買仲介に強みを持つ業者を選ぶことが大切です。
- アンダーローンになるかオーバーローンになるのか早く知りたい
- 手早く不動産を売却したいが、どうすればいいかわからない
- 他にもすべきことがたくさんあるので、不動産は誰かに任せたい
- とりあえずいくらで売れるのか知りたい
- そもそもどこの不動産業者に頼めばいいのかわからない
- 不動産業者を多数回るのはめんどうだ
こんな悩みや希望を持っている方は、ぜひ一括査定サイトを利用し、「これだ!」と思った不動産業者に相談してみましょう。
ふたりが新しい人生のスタートを切るために
離婚時の財産分与で不動産売却の際に必要な知識や注意点について解説してきました。
一緒に暮らしたマイホームは、結婚生活においては楽しい場所でしたが、離婚をする場合にはトラブルの元になりかねません。
ずるずると問題を先延ばしすることがないよう両者できちんと話し合い、マイホームを売却する場合には迅速に手続きを進め、売却しないのであれば、どういった形で所有を続けるのか明確にすることが非常に大切です。
そのためには、離婚する際の財産分与については、価格が大きい不動産の価値を知ることが、まず第一歩です。
一括査定サイトで依頼した不動産業者や、場合によっては弁護士などの専門家も含めて、できるだけ早く問題を解決することにより、両者が気持ちよく新しい人生のスタートを切れるのではないでしょうか。
以上、離婚時の財産分与で不動産売却の際に必要な知識と4つの注意点…でした。
参考
離婚などの権利調整が必要な不動産でも対応できる業者を探したい…という方は下記記事も参考に。一括査定サイトのなかには、ワケあり物件に強く、不動産以外の相談にも応じてくれるサービスもありますよ。