アパート経営が相続税の節税につながる3つの理由【土地・建物の評価減 】

相続税を節税するためにアパートを建築することはよく知られています。
現金をアパートに替えるだけで相続税の節税になるのですが、いったいどのような仕組みによるものなのでしょうか。

相続税には、そういった仕組みやルールがあるので、知らないと損(?)をしてしまうかもしれません。

ただし、アパートを建てただけでは意味がなく、アパート経営をしなければいけないのです。経営には、さまざまなリスクが潜んでおり、しっかりとした理解がないと失敗してしまいます。

アパート経営やマンション経営、いわゆる「アパマン経営」を考えてはいませんか? とくにアパート経営は代表的な土地活用ですが、建物を建築す...


今回は、アパートを建てることが相続税の節税につながる仕組みと、アパート経営における注意点などについて解説していきます。

しっかりとポイントをつかんで、アパート経営と相続税対策の両方を成功させてください!

アパート経営は相続税対策の代表的な土地活用

相続税対策のために、アパートを建てることはポピュラーな土地活用のひとつです。

アパート(建物)の評価の基準は、取得費(建築費や購入代金)ではなく、それより低い固定資産税評価額となります。このため、現金資産をアパートなどの不動産資産へ組み替えることだけでも相続税対策になります

例えば、現金1億円を相続した場合、相続税評価額は1億円となります。
1億円に対して相続税が課税されることになり、節税効果はありません。



ところが、その1億円を使ってアパートを建てて不動産化すると、相続税評価額は約60%に圧縮され、さらに賃貸することで70%に圧縮されます。

その節税効果をあわせると、1億円の評価額を約4,200万円まで下げることができ、約5,800万円の資産圧縮効果があります。



そのうえ、土地については活用用途に応じて評価額の算定方法が定められているため、アパートを建築することで土地の評価額を大幅に下げることができ、土地・建物ともに評価額の圧縮効果があるのです。

ただし、現金資産から不動産資産へ組み替えることは、節税効果などのメリットばかりでなくリスクも伴います。

アパートを建てることによるメリットとデメリット(リスク)のポイントは以下の通りです。

<メリット>

  • 土地の評価額が更地と比べて下がる
  • 建物の評価額が取得価額(建築費)と比べて下がる
  • 安定的な賃料収入が得られる
  • 法人化することでさらに節税効果が期待できる
  • ローンを組むことで相続税対策となる

<デメリット(リスク)>

  • アパート経営に失敗すると資金繰りが苦しくなる
  • 物納が難しくなる
  • すぐに現金化できない


相続税対策としてアパート経営を行う時は、「不動産投資という事業を立ち上げる」という視点を持ち、経営者としての知見やスキルを身に付けることが大切です。

アパートを建てることが目的ではなく、建てることにより得られるメリットやデメリットを理解したうえで、相続税を含めた全体像を把握しましょう。

アパート経営の相続税対策に有効な3つの理由

次に、アパート経営が相続税対策に有効な3つの理由について詳しく説明していきます。

土地の評価額が更地と比べて下がる

「小規模宅地等の特例」を活用する

被相続人(亡くなった人)が事業や居住のために使っていた土地は、生活の基盤となる財産です。

そのため、そういった土地を相続した場合、その土地のうち居住用は200平方メートル、事業用は400平方メートル迄に対して、一定の割合で減額することができます。これを小規模宅地等の特例といいます。


<小規模宅地等の特例の減額割合>

※引用元:国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

アパートを相続した場合は、この表の赤枠部分である④、⑤にあたります。

④と⑤の違いは、④はアパートを不動産会社などに貸して、その不動産会社が転貸(サブリースといいます)しているケースです。
⑤は、アパートの所有者が貸主として入居者に貸している一般的なケースです。

どちらの場合も、貸付事業用の宅地等に該当するため、200平方メートルまでの土地評価額が50%になり、200平方メートルを超える部分はそのまま算定されます。

アパートを建てると「貸家建付地」となり土地の評価が下がる

土地所有者が自分の名義でアパートを建てて賃貸している場合、その土地を「貸家建付地」といいます。

貸家建付地の評価は、自用地(更地など自分で制限なく利用できる土地)の評価額から借地権割合(土地ごとに決定)と借家権割合(全国一律30%)、賃貸割合(空室の状況)をかけた分を差し引くこととなります。

貸家建付地の相続税評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

たとえば、借地権割合が60%で自用地評価額1億円の土地にアパートを建てた場合、この土地の評価額は、下図の通り8,200万円となります。



賃貸割合とは、アパートの空室部分を貸家建付地から除外することですが、一時的な空室と判断される場合はその限りではありません。ただし、満室であることに越したことはないので、アパート経営にしっかりと取り組むことが重要です。

建物の評価額が取得価額(建築費)と比べて下がる

建物の評価額は、取得価額(建築費)ではなく、固定資産税評価額で評価されます。

一般的に、固定資産税評価額は建築費の約60%程度といわれており、アパートの場合は、そこからさらに借家権割合(全国一律30%)を減額した価額となります。

前述の通り、1億円でアパートを建築した場合、

【建築費】1億円 × 【※固定資産税評価額】60% × (1-【借家権割合】30%)=約4,200万円

※固定資産税評価額は建物によって異なり、概算です。

このように、現金で支払っても約5,800万円の資産圧縮効果がありますし、ローンを利用した場合は、借入額をマイナス財産として算定できます。

そのため、アパートを建築することは相続税上で大きなメリットとなります。

法人化すると相続税の対象外に

ある一定の賃料収入を超えた場合、個人としてアパート経営を行い青色申告するよりも、法人化して申告する方がさまざまなメリットがあります。

法人化してアパート経営を行うと、アパートは法人の所有となるため、相続税を算定するうえで相続税の対象財産ではなくなります。そのうえ、アパートの収益を給与や役員報酬などで分散することで、所得税対策になります。

また、法人で不動産を所有するため、金融機関からの融資を受けられやすくなります。金利も個人で融資を受ける場合より法人の方が低い場合が多く、有利な資金調達が期待できます。

大規模修繕や改修工事を行う場面で、効果を発揮します。

安定した賃料収入が続けられている場合、税制面だけでなく、さまざまなメリットのある法人化を積極的に検討してみましょう。

アパート建築した場合の相続税の事例

ここでは、実際にアパートを建てて相続税対策を行ったSさんの事例を検証してみましょう。

Sさん(40代・男性)の父親が亡くなった時、財産を相続するにあたって、母親が全財産を相続し、配偶者控除の特例を利用して納税を不要としました。

しかし、次にSさんが相続する時には、このままでは約6,060万円の相続税納税が予想されるため、対策を行う必要がありました。



【対策前の相続税予想納税額】
相続財産2億3,000万円-基礎控除額(3,000万円+600万円)=課税遺産総額1億9,400万円

相続税予想納税額
1億9,400万円×40%-1,700万円=6,060万円


課税価格税率控除額
1000万円以下10%
3000万円以下15%50万円
5000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1700万円
3億円以下45%2700万円
6億円以下50%4200万円
6億円超55%7200万円
※引用元:国税庁 No.4155 相続税の税率


そこで、Sさんは老朽化した実家を解体し、母親とSさん家族の5人が住めるアパート併用住宅を建てることとしました。
資金は、母親の預金を使うこととしました。



Sさん家族は、母親と同居することにより小規模宅地等の特例を適用することができ、また、賃貸住宅を建築することにより貸家建付地を適用し、相続税評価減を行いました。


【土地部分の評価減】
自宅部分(3分の1) 小規模宅地等の特例により80%減
賃貸部分(3分の2) 貸家建付地評価により18%減
合計 5,800万円の評価減


また、現金をアパート併用住宅という不動産化することで相続税評価減を行いました。

【建替えによる評価減】
建築費用 ▲7,000万円
解体費用 ▲ 200万円
建物評価額 2,800万円
合計 4,400万円の評価減


【対策後の相続税予想納税額】
相続財産2億3,000万円-土地・建物評価減(5,800万円+4,400万円)-基礎控除額(3,000万円+600万円)=課税遺産総額9,200万円(対策前と比較して▲1億200万円)

相続税予想納税額
9,200万円×30%-700万円=2,060万円

となりました。

対策前の相続税予想納税額6,060万円 → 対策後の相続税予想納税額2,060万円

土地と建物の評価減を組み合わせることによって、4,000万円の大幅な節税効果が得られたのです。

アパート経営の3つの注意点

最後にアパート経営をする際に、気を付けなければならない3つの注意点について説明します。
しっかりと理解して、失敗のないアパート経営に取り組みましょう。

経営に失敗するとローン返済に悩まされ、資金繰りが苦しくなる

アパートは、建築後15年ほどすると現金収支が悪化する3つのリスクがあります。
それぞれについて説明します。

賃料の下落リスク

アパートは建築後15年ほどすると、近隣に新築の競合物件が建つことや、アパートの設備や仕様などが陳腐化することなどにより、新築当時の賃料では空室状態が続いてしまうことがあります。

そのため、賃料を値下げして入居者を募集することになり、現金収支が悪化するリスクがあります。

ちなみに、サブリース方式であっても安心はできません。

所有者とサブリース業者との契約においても、2年ごとに賃料改定ができる、といった条項が盛り込まれているケースがほとんどです。
よく注意して、契約条件を確認することが大切です。

減価償却のリスク

建築後15年経過すると設備分の減価償却費が取れなくなります。
減価償却費とは、建物や設備の購入金額を資産として計上した後に、その金額を資産の耐用年数にわたって規則的に費用として収入から控除できる費用です。

減価償却費は実際の支出を伴わない費用であるため、財務的な効果を持っています。

アパート経営においては、建物と設備に分けて減価償却します。
建物の耐用年数は、木造22年、軽量鉄骨19年、重量鉄骨34年、鉄筋コンクリート47年となっており、設備は一般的に15年となっています。

すなわち、16年目以降は設備分の減価償却費用が控除できないため、その分所得税や住民税の税額が増えることになり、現金収支が悪化するのです。

金利支払いのリスク

ローンを利用してアパートを建てた場合、金融機関などに、毎月元本と金利を返済することになります。返済方法は、元本と金利の合計が一定額のまま返済する元利均等返済のケースが一般的です。

そのため、返済当初は返済額のほとんどが金利ということになります。
年数を重ねて返済が進めば、元本部分が大きくなり金利部分が少なくなる仕組みです。

金利部分は所得税の計算上、控除することができますので、返済のうち金利が多い時はその分所得税が少なくなりますが、金利部分が少なくなると所得税の納税額が増えます。返済額は一定のため、その分現金収支が悪化することになります。


これらにより、現金支出は他にも固定資産税、所得税、維持管理費用、保険料などいろいろとあるため、資金繰りが苦しくなる可能性があります。

事前のリスク分析をしっかりと行い、シミュレーションをしてアパート経営に失敗がないように施策をたてておくことが非常に重要です。

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土地の上に建物が建ってしまうことで、物納として利用しにくくなる

相続税は、現金による一括納付が原則です。
しかし、延納によっても現金で納付することが難しい場合には、現物で納付する「物納」が認められています。

不動産も物納できる財産に含まれますが、抵当権が設定されているものなどは物納できません。

不動産の場合、更地であると優先的に物納が認められるケースが多く見られます。
土地上にアパートという建物が建っている不動産は、物納が認められることは難しいケースが多いでしょう。

納税のために現金化したくてもすぐ売却できるとは限らない

アパートなどの不動産を納税のために売却する場合、ある程度の期間を想定しておく必要があります。

株や債券であれば、マーケットですぐに現金化ができますが、不動産はそうはいきません。まずは、売却物件として流通させるために準備をし、不足している要件があれば対応しなければなりません。

また、相場より売却希望価格が高い場合は、当然成約までに時間がかかりますし、早く売りたいと焦れば買い叩かれてしまいます

こういった事情を含んでいくと、やはり売却完了までは数ヶ月の期間は想定しておく必要があるでしょう。

アパート経営は事業経営です

アパートを建築して賃貸することは、事業経営です。
事業経営には様々なリスクがあり、近隣にある競合物件との競争にも勝たなければなりません。他人任せでは絶対に良い結果は残せません。

相続税対策という面だけを考えてアパート経営を行うのではなく、事業経営にあたって事前にさまざまなリスク分析をし、長期的に安定した経営ができるよう、しっかり準備しなければなりません。

アパート経営やマンション経営、いわゆる「アパマン経営」を考えてはいませんか? とくにアパート経営は代表的な土地活用ですが、建物を建築す...


アパート経営は長期にわたる事業ですので、時代背景の変化や入居者のニーズ、賃貸市場の動向やマーケットの変化など、常にアンテナを張り巡らせ、経営者としての自覚と視点を持つことが求められます

以上、アパート経営が相続税の節税につながる3つの理由【土地・建物の評価減】…でした。

 

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