「定期借地権付きマンションが売れない!」不動産業界でよく聞かれる話ですが、本当でしょうか?
たしかに、定期借地権付きマンションにはいくつかのデメリットがあり、売却が難しい場合があります。しかし、定期借地権付きマンションには独自のメリットがあり、適切な買い手を見つければ高値で売却できる可能性があります。
この記事では、定期借地権付きマンションの魅力や購入可能性のある買い手について詳しく解説します。また、売却活動を成功させるためのヒントも紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、定期借地権付きマンションを高値で売却する秘訣をつかんでください。
定期借地権付きマンションの現状
定期借地権付きマンションの現状について、すでにご存知の方はここを読み飛ばして、「中古の定期借地権付きマンションが売れない理由」からどうぞ。
定期借地権付きマンションとは?
定期借地権付きマンションにお住まいの方はご存知でしょうが、再確認の意味で説明します。
定期借地権とは?
平成4年8月より施行された借地借家法(新法)では、「定期借地権」が新たに規定されました。「定期借地権」とは、定められた契約期間で借地契約が終了し、更新ができない借地権のことをいいます。
定期借地権には、「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」の3種類がありますが、定期借地権付きマンションに利用されているのは主に「一般定期借地権」です。
一般定期借地権の特徴は、
- 契約期間は50年以上
- 更新はなし
- 契約満了時には建物を取り壊して更地返還が原則
となっています。
定期借地権付きマンションは「利用する」がコンセプト
通常の分譲マンションは「土地も建物も所有する」という所有権の権利形態です。これに対して、定期借地権付きマンションは「土地を期限付きで借りて、建物は所有する」という権利形態になっています。
契約期間は50年から70年程度の物件が多く、地主へ毎月地代を払います。契約期間が満了すると、建物を取り壊して更地にし、土地所有者(地主)へ土地を返還しなければなりません。
また、定期借地権付きマンションと所有権マンションとのコスト面での違いを一覧表にまとめたものがこちらです。
費用 | 定期借地権付きマンション | 所有権マンション |
---|---|---|
地代 | 毎月支払う | なし |
土地分の固定資産税・都市計画税 | なし | 持分割合に応じてあり |
管理費・修繕積立金 | あり | あり |
解体積立金 | 契約期間満了後の解体に備えてあり | なし |
保証金・権利金などの一時金※ | 土地を借りる際に発生する | なし |
旧借地借家法は土地所有者にとって大変不利な法律だったため、土地所有者の権利を守るために定期借地権が創設されました。
そのため、定期借地権付きマンションは「所有する」というより「利用する」というコンセプトで建てられています。
<所有権マンションと定期借地権付きマンションのイメージ>
定期借地権付きマンションの供給状況
公益財団法人日本住宅総合センターの定期借地権事例調査によると、2017年度(平成29年4月~平成30年3月)に収集した定期借地権付きマンションの供給戸数は、15件・639戸でした。
1993年から2018年3月までに収集したマンションの事例数は、680件・2万2,593戸となっており、近年の供給数は減少傾向にあります。
出典 公益財団法人 日本住宅総合センター 定期借地権事例調査(2017年度)
このグラフを見ると、1994年度から2000年代前半までの供給数が多かったものの、2009年度以降は供給数が大きく落ち込んでいることがわかります。
三者三様のメリットから供給数が増えた1994年度から2000年代前半
1990年台はバブル崩壊後ですが、土地の価格はまだまだ高値だったので、都心に登場した定期借地権付きマンションは話題を呼びました。
土地所有者のメリット
土地所有者にとっては、定期借地権を利用することで低リスクで安定収入を得られます。そのため、都心に土地を持っていて納税の心配があまりないお寺や外国大使館などが、定期借地権を利用した事例があったのです。
マンション購入者のメリット
マンション購入者にとっては、低価格で専有面積が広く、交通アクセスの良い都心部でマンションを購入することが可能になるメリットがありました。
30代で購入すれば50年後は人生を全うしている可能性もあり、「50年間都心の一等地に住めるのであれば、それで満足」という考えを持つ購入者も現れ始めました。まさに「所有」より「利用」です。
マンション事業者のメリット
また、マンション事業者も近隣の所有権マンションと比較して、「価格面で優位性のあるマンションを供給できるため販売しやすい」というメリットがありました。
こういった三者三様の事情を背景に、当初、定期借地権付きマンションは順調に供給数を伸ばしていったのです。
2009年度以降は供給数が落ち込む
しかし、長引く土地価格の低迷から土地所有者も土地を保有し続けるメリットが薄れ、土地を売却するケースが増えてきました。
マンション購入者やマンション事業者も、所有権マンションの価格が低下し、専有面積も広がり、都心でも購入可能な所有権マンションが登場してきたことで、定期借地権付きマンションの優位性が薄れました。
そのため、2000年代に入って供給数は減少してきています。
中古の定期借地権付きマンションが売れない理由
新築では人気のある定期借地権付きマンションですが、中古になると「売れにくい」という声は少なくありません。
なぜ、売れにくいのでしょうか?
売れにくい理由は3つあります。
- 定期借地権の残存期間=居住可能期間
- 住宅ローンが借りにくく、条件が厳しい
- 建物の修繕計画が実行されないことも
売却方法を考える前に、それぞれの詳しい内容を確認していきましょう。
売れない理由1:定期借地権の残存期間=居住可能期間
定期借地権付きマンションは、定期借地権の残存契約期間が居住可能な期間となります。期間満了をもって、解体・更地引き渡しをしなければならないからです。
買い手の立場からすると、いつまでも住み続けることができないことがネックになって購入を思いとどまってしまうのでしょう。
定期借地権の残存期間が少なくなれば、所有権マンションより値下がりすることも多いので、賃貸物件として運用することも視野に入れる必要があります。
売れない理由2:住宅ローンが借りにくく、条件が厳しい
新築時には、定期借地権の契約期間も50年以上あるため、35年の住宅ローンを利用することも可能です。ところが、中古になると買い手が住宅ローンを利用できなくなる可能性もあるんです。
定期借地権の残存期間内に返済期間を限定する金融機関がほとんどなので、残存期間によっては毎月の返済額が大きくなり、買い手が住宅ローンを組めないことも少なくありません。
なかには「返済終了時に定期借地権の残存期間が10年以上」といった、厳しい制限を設ける金融機関もあります。
このように、中古の定期借地権付きマンションを購入する場合は、買い手の住宅ローンが借りにくく、条件が厳しくなることが多いのです。
売れない理由3:建物の修繕計画が実行されないことも
定期借地権付きマンションは契約期間満了後、建物を取り壊し、更地で土地を所有者に返還します。そのため、建物の長期修繕計画に則った修繕工事が、ある期間を境に実施されないリスクがあります。
新築後20年から30年くらい経ち、建物や設備が老朽化しても「どうせ最終的には取り壊すのだから・・・」という考えのもと、修繕工事にコストをかける意欲が低下するのでは、という見方があるのです。
定期借地権付きマンションが誕生して、まだ50年を迎えた事例はありません。そのため、建物を取り壊して更地にした物件はないのです。
実際の事例がないので、「どんな経過をたどり、最終的にどうなるのかは現状では想定できない」というのが実態なんです。
ところで、建物の老朽化と住民の高齢化が進んでスラム化してしまったマンションを「限界マンション」といいます。
今後、爆発的な増加が予想される「限界マンション」ですが、じつはタワーマンションも例外ではありません。詳しくは下記記事で解説しています。
定期借地権マンションのアピールポイント
定期借地権付きマンションを売るには、買主にとってのメリットを知っておく必要があります。
メリットは、おもに3つあります。
- 同ランクの所有権マンションより割安感がある
- 立地の良い都心部にある
- 高級マンションが多い
売却時にはアピールポイントにもなりますので、確認しておきましょう。
同ランクの所有権マンションより割安感がある
新築時の分譲単価でみると、定期借地権付きマンションは所有権マンションの70%~80%程度の価格になっていることが多いです。地代支払い分を住宅ローンに換算して補正しても、そのような傾向があります。
金融機関も、以前は定期借地権付きマンションへの住宅ローン融資に消極的でした。しかし、最近では融資に積極的な金融機関が増えてきており、定期借地権付きマンションの資産価値を上げています。
とはいえ、先程も触れたとおり、中古物件の場合は融資が降りにくい面もあるので注意が必要です。
立地の良い都心部にある
定期借地権付きマンションは、都心の一等地にある物件が少なくありません。「所有権マンションなら、決して購入できないような立地に住める」というのは、大きなメリットです。
都心部に住めば、通勤地獄に苦しまなくてもすみます。早く帰宅できるので、プライベートな時間も充実できるでしょう。
都心の夜景を眺めながら、セレブな生活を楽しめることも魅力のひとつです。
高級マンションが多い
マンション事業者にとっては土地分の取得コストがないので、建物にその分のコストをかけられます。
そのため、定期借地権付きマンションは、高級感のあるタワーマンションだったり、高品質・高機能でスタイリッシュなデザイン性のあるものが多く見られます。
このように立地が良く、高品質でデザイン性の高いマンションは人気があるので、あえて定期借地権付きマンションを検討する人も少なくありません 。
定期借地権付きマンションを購入する可能性のある買い手とは?
中古の定期借地権付きマンションを購入するターゲットとしては、定期借地権の残存期間をそれほど気にしないことがポイントになります。
具体的には、このような購入層でしょう。
- 60代以上の熟年世代
- 外国人投資家を含めた富裕層
その理由をそれぞれ詳しく解説します。
60代以上の熟年世代
中古の定期借地権付きマンションを「終の棲家」として考えられるのは、60代以上の熟年世代です。
都心部にある定期借地権付きマンションであれば、車を保有する必要もありません。不動産資産として残すことを考えなければ、立地がよく専有面積の広い高品質なマンションで送る生活は、快適性や利便性に優れているでしょう。
定期借地権付きマンションなら、そのような生活を割安価格で実現できます。
子供たちを育てた郊外にある広い一戸建てを売却して、その資金で都心部への移住を考える熟年夫婦は少なくありません。そのような熟年世代にとっては、定期借地権付きマンションを検討する価値は十分あるでしょう。
外国人投資家を含めた富裕層
一時期ほどではないとはいえ、中国人をはじめとした外国人富裕層の購入意欲は高く、都心のマンション需要は旺盛です。
このような富裕層にとって、欲しいと思える所有権マンションが見当たらなくなると、都心部の立地に優れた定期借地権付きマンションに目が向く可能性があります。
先ほど触れたように、都心部の定期借地権付きマンションは、高品質でデザイン性に優れた物件が少なくありません。富裕層の求める物件にピッタリなので、彼らの目に留まる可能性は高いでしょう。
ただし、東京オリンピック以降はマーケットがどうなるか不透明です。外国人投資家を含めた富裕層を狙うのであれば、早めに売却した方がよいでしょう。
定期借地権付きマンションに求めるのは「所有」ではなく「利用」
定期借地権付きマンションは資産として残せません。そのため、家を「所有すること」より「利用すること」を重視する人に向いています。
夫婦二人の熟年世代、都心部にマンションが欲しい富裕層など、ターゲットを誤らなければ戦略的に売却活動ができるでしょう。
売却にあたっては、定期借地権付きマンションの知識と魅力をよく理解することも大切です。
また、今や不動産会社を探すには一括査定サイトを使うのが一般的です。HOME4U不動産売却のような大手の一括査定サイトを使って、定期借地権付きマンションの売却に強い不動産会社を選ぶことも忘れないでください。
以上、定期借地権マンションが売れない理由と高値で売却するためのポイント… でした。
参考記事 借地権付き物件の売却が得意な不動産会社もあります。下記記事では、そのような会社を集めた一括査定サイトについても紹介しています。