不動産(土地や家)を代理人として売却する方法と押さえておきたい注意点

不動産を売却する場合、通常はその不動産の所有者本人が、売買契約や決済引渡しなどの一連の手続きを行います。たとえ、配偶者や子供であっても、所有者本人に無断で売却することはできません。

しかし、事情によっては所有者本人が売却の手続きを行うことができない場合もあります。

そのような場合に、代理人を立てて売却を進めるという方法がありますが、代理人の選定方法や手続き、注意するべき点など不安なことだらけではないでしょうか?

今回は、そのようなあなたの不安を解消するために、代理人の選び方、代理人により不動産を売却する方法や注意点、親が認知症になってしまった場合の対策などについて詳しく解説します。

どうしても所有者本人が不動産売却を進められない場合の解決策をぜひ学んでください。

代理人による不動産売却とは?

基本的に所有者本人でなければ不動産を売却できない

不動産の売却にあたっては、所有者本人が売買契約や決済引渡しに立ち会わなければなりません。

仲介をする不動産業者や登記を担当する司法書士には、平成20年3月1日に施行された「犯罪収益移転防止法」により、売買契約の締結や所有権移転登記にあたっては本人確認が義務付けられています

本人確認とは、顧客が個人であれば住所・氏名・生年月日を、顧客が法人であれば、法人名・本店所在地を確認することをいいます。本人確認書類の提示を受ける方法は、運転免許証・パスポートなどの顔写真付きのものがよく利用されます。

所有者本人が売買契約や決済引渡しに立ち会い、本人確認をすることで、マネーロンダリングや所有者のなりすまし詐欺などを防いでいるというわけです。

代理人が売却する方法もあり

しかし、所有者が遠方に住んでいる、高齢者のため移動が困難である、海外に赴任して日本にいないなど、所有者本人が事情によりどうしても売買契約や決済引渡しに立ち会えない場合があります。

その場合、所有者本人が委任した代理人が手続きを進める、という方法を取ることができます。

代理人は、与えられた権限の範囲内で契約手続きなどの法律行為を所有者本人に代わって行うことができ、代理人が行った行為の責任や成果はすべて委任した所有者本人に帰属します。

所有者本人が代理人へ与える権限は、不動産売却に関するすべての権限を与えることも可能ですし、一部の権限のみを与えることも可能です。

また、代理人が与えられた権限の範囲を超えた行為をした場合や、以前は代理人としての権限があったが、法律行為時には消滅していた場合などは無権代理となります。

無権代理人が締結した契約は無効であり、原則として所有者本人には効力が生じません。

しかしながら無権代理であっても、代理人の権限があると信ずるに正当な理由がある場合は表見代理となり、「善意無過失」の相手方(不動産売却の場合は買主)から、表見代理を主張されて所有者本人の責任を問われる可能性があります。

代理人は親族、司法書士、弁護士など

代理人には「法定代理人」と「任意代理人」の2種類があります。

法定代理人

法定代理人とは、民法の規定により定められた代理人のことであり、親権者や成年後見人などがあたります。

不動産売却を行うにあたって、売買契約の当事者が「未成年」の場合は親権者などが、売買契約の当事者が「判断能力が不十分」の場合は成年後見人などが法定代理人として権限が与えられます。

任意代理人

法定代理人以外の代理人はすべて任意代理人であり、原則として誰でもなれます
弁護士や司法書士 などの専門家や親族などはもちろんのこと、第三者でもなることができます。

ただし、任意代理人が本当に所有者本人から委任を受けて、不動産売却に関する権限を与えられているのかどうかを証明するため、代理権委任状が欠かせません

不動産は高額な財産であり、その売却について代理人が行った契約手続きなどの法律行為は、委任者である所有者本人の行為と同等の効力を持ちます。

したがって、代理人を選ぶ場合は弁護士や司法書士などの専門家以外の第三者を選ぶことは避け、信頼のおける親族(親子や配偶者)などを選びましょう


<代理人イメージ>

代理人として不動産を売却する方法と注意点

実際に代理人として不動産の売却を進める場合の方法と注意点について説明します。あなたが代理人に選ばれたと想定して、確認していきましょう。

代理売買に必要な書類等

まず、代理人として不動産を売却するために必要な書類は以下の通りです。


<代理売買に必要な書類>


また、仲介する不動産業者がいる場合、その不動産業者に一度は所有者本人と面談のうえ、本人確認・不動産売却の意思確認・代理人に委任した事実の有無などを確認してもらいましょう。

電話で確認する方法もありますが、直接会って確認してもらうことが大切です。

委任状が必要

代理人は所有者本人から委任状を受領し、売買契約時などに契約の相手方(買主)に必要書類とともに提示する必要があります。

なぜなら、代理人による取引は相手方にはリスクの大きな取引のため、相手方に無権代理による契約でないことを証明し、信頼感と安心感を与えなければならないからです。

委任状には決まった形式はありませんが、誰が誰に委任をするのか、売却する物件の特定、与える権限の範囲などについて明確にしなければなりません。
そのため、下記の項目について記載します。

  • 委任者(所有者本人)の住所・氏名の署名・実印による押印
  • 代理人の住所・氏名の表示
  • 対象土地の表示(所在・地番・地目・地積など)
  • 対象建物の表示(所在・家屋番号・種類・構造・床面積など)
  • 委任する権限の範囲(売買契約の締結に関する権限・手付金および売買代金の受領に関する権限・所有権移転登記申請および司法書士選任に関する権限・これらに付帯する権限など)
  • 委任状の有効期限
  • 日付

委任状の押印は、実印で行わなければ効力がありません。


<委任状のサンプル>

念のため不動産の名義を確認

売却の代理権委任を受けた不動産(土地・建物)について、念のために所有者の名義を確認しておくことも大切です。

その不動産を管轄する法務局で登記事項全部証明書を取得すれば、所在・地番・地積などの不動産情報の他に所有者を確認することができます。

あなたの親名義の不動産であっても、相続により親の兄弟など複数名の共有名義になっているケースも考えられます。
共有名義の不動産であれば、共有者全員の同意がなければ売却できません。

共有者全員の同意が取れれば、共有者全員の委任状・印鑑証明書・本人確認書類を取得し、代理人の権限の範囲内において共有者全員に代わって売却手続きを進めることができます。

売買契約書の記載方法

代理人として不動産の売却を進める場合、売買契約書の記載方法については以下の通りとなります。


<任意代理のときの代理人の署名・押印の例>


ここで注意したいのは、代理人の押印は必要ですが、所有者本人の押印は不要であることです。


<共有名義で一人の共有者が他の共有者の代理人となるときの署名・押印の例>


ここでも、代理人の押印は必要ですが、委任した共有者の押印は不要です。

売却益は所有者のもの

代理人が行った不動産売却に関する行為は、すべて委任者である所有者本人に帰属します。そのため、代理人は売買代金を受領する手続きを行ったに過ぎず、売買代金を収受する権利は所有者本人のものとなります

ただし、所有者本人が不動産売却の手続きを代理人に行わせたことに対する報酬を支払うことは問題ありません。

認知症の疑いがある場合

親が不幸にも認知症になってしまった場合、不動産売却をどのようにして進めたらよいのか、確認していきましょう。

判断能力の有無は医師の診断書が必要

不動産を売却するためには、売買契約という法律行為を行わなければなりませんが、所有者本人が認知症を患い判断能力に欠けてしまった場合は、売買契約という法律行為ができません。

ここでポイントになるのは、「判断能力に欠ける」という状態がどういう状態なのか、という点です。

自分の名前や生年月日を言えないような状態であれば「判断能力に欠ける」とわかりますが、ハッキリと判定できないケースも多いでしょう。

判断能力の有無を判定するのは、家族でも弁護士でもなく、やはり医師ということになります。

医師により、「判断能力がある」と診断されれば本人が対応できますし、「判断能力が不十分もしくはない」と診断されれば対応策を考えなければなりません。その場合は、後の手続きにも必要となるため、医師の診断書を取っておきましょう。

判断能力が不十分なら成年後見制度

所有者本人が「判断能力が不十分もしくはない」と診断された場合、家庭裁判所より後見開始の審判を受けたものを「成年被後見人」といい、成年被後見人単独では不動産の売買契約はできません。

「売却する」という意思の確認も「契約する」ことの理解もできないためです。

このような場合、「成年後見制度」を利用して「成年後見人」という法定代理人をたてる必要があります。

成年後見人の役割は、本人に代わって財産を管理したり、必要な契約を締結したりすることによって、本人を保護・支援することですが、不動産を処分することも可能です。

成年後見人は、本人の子供だからといって自動的になれるものではなく、家庭裁判所により選任されるものです。

誰が成年後見人になれるか?

成年後見人には、下記の欠格要件に該当しなければ誰でもなることができます。

<成年後見人の欠格要件>

  • 未成年者
  • 過去に成年後見人等を解任された人
  • 破産者で復権していない人
  • 本人に対して訴訟をしたことがある人、その配偶者または親子
  • 行方不明である人

親族を成年後見人の候補者として申立てたとしても、家庭裁判所が親族を選任するとは限りません。

また、候補書として申立てた家族ではなく、家庭裁判所の判断により後見人候補者名簿などに登録のある弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門家が選任される場合もありますが、本人保護の観点から不服の申立てもできません。

成年後見の申立て手続きの流れと提出書類

成年後見の申立て

家庭裁判所に対して後見開始の申立てを行います。
この時、管轄裁判所は認知症である本人の住所地を管轄する家庭裁判所となります。

申立ては本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市区町村長などが行うことができます。

<提出書類>

  • 申立書(家庭裁判所で入手可能)
  • 親族関係図
  • 本人の財産目録
  • 本人以外が申立てをする場合は申立人の戸籍謄本1通・本人の戸籍謄本および附票・登記事項証明書・医師診断書
  • 成年後見人の候補者の戸籍謄本・住民票・身分証明書・登記事項証明書・申立書付票・身上書

なお、申立てには申立手数料として収入印紙800円、郵送切手代として5,000円程度、登記手数料として収入印紙2,600円、必要に応じて鑑定費用などおよそ10万円~12万円程度の費用がかかります。

家庭裁判所による事実の調査

申立人、本人、成年後見人候補者が家庭裁判所に呼ばれ、調査官より事情を聴かれます。なお、必要と認められれば精神鑑定が行われる場合もあります。

審判

家庭裁判所が成年後見の審判をします。
基本的に成年後見人候補者の中から成年後見人が選任されますが、場合によっては家庭裁判所の判断により、候補者以外の弁護士などが選任されることもあります。

審判の告知と通知

家庭裁判所より審判書謄本を受け取ります。

成年後見開始

成年後見の申立てが認められた場合、その旨が法務局で登記され、手続きは完了となります。

なお、申立てから審判までの期間はおおよそ2ヶ月程度ですが、本人の状態によりもう少し長くかかる場合もあります。

本人のために必要な場合のみ売却できる

所有者本人の不動産を成年後見人が売却するためには、「正当な理由」が必要です。

「正当な理由」とは、不動産を売却して得たお金を本人が施設に入所する費用に充てたり、本人が住んでいた家が空家状態のため管理面から売却したり、などです。

本人の判断能力がないからといって、成年後見人である親族が自分の好きなように財産を処分したり、一部を自らのお金としたりすることは許されません。

また、本人の居住用不動産の売却であれば、家庭裁判所に申立て、許可を得ることが必要となります

居住用不動産とは、現在住んでいる自宅は当然ですが、認知症が回復した場合に施設から戻るための空家も含みます。

委任状交付には十分な注意を!

不動産の売却を代理人に委任するためには、委任状を交付すれば可能ですが、誰でもよいわけではありません。信頼のできる親族や専門家に任せることが大切です。信頼関係が構築できていない第三者などに任せることは絶対に止めましょう。

地面師などによる不動産の詐欺事件は近年また増えてきています。
プロである不動産業者でさえ騙されている世の中ですので、委任状交付には十分に気をつけてください

また、日本も高齢化社会を迎えて、認知症などを患う親の不動産を売却するケースが増えていくことが予想されます。

成年後見制度は社会的に浸透してきていますが、制度自体を理解することも簡単ではなく、手続きなども大変複雑です。必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら、事前に準備を始めておくことをお勧めします

以上、不動産(土地や家)を代理人として売却する方法と押さえておきたい注意点… でした。

 

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