「公簿売買で土地を売却するのって、大丈夫なのかな…?」
そんな不安を抱えていませんか?
実は、公簿売買は不動産売却において、トラブルが発生しやすい取引のひとつ。不動産価格を左右する土地面積に関するトラブルなので、深刻な問題となることが少なくありません。
そこで今回は、公簿売買におけるトラブル事例と、それを防ぐために必ず押さえておきたいポイントを紹介します。売却活動を始める前に、ぜひチェックしておきましょう!
この記事を読むことで、公簿売買に対する不安が解消され、安心して土地の売却を進められるようになりますよ。
- すべての境界標を確認する
- 敷地の周りを測る
- 良い営業マンの対応にかかっている
公簿売買と実測売買の違い
土地を売却する際、「公簿売買」と[実測売買]の2種類の取引方法があります。この取引方法の違いによって、土地の売買価格も変わってくるので注意してください。
ここでは「公簿売買」と「実測売買」のそれぞれの特徴や違いなどについて説明します。
公簿売買とは?
「公簿売買」では、登記簿上の面積である公簿面積によって、売買する土地の面積を決定します。
もし、売却後に確定測量を行って、取引時の公簿面積との間に誤差が生じても売買価格は変わりません。つまり、誤差分の清算は行わないということです。
<公簿売買の契約書の実例>
ただし、地積測量図や現況測量図などと現地や登記簿謄本を照合し、あらかじめ面積などに不一致がないか確認しておきましょう
売買契約書や重要事項説明書には、「公簿売買」または「実測売買」のいずれかが明記されています。
<公簿売買の重要事項説明書の実例>
土地面積が広大な山林や農地などでは、土地単価が低いわりに測量費用が大きな負担になってしまいます。そのため、確定測量を行わずに公簿売買で取引するケースが多く見られます。
参考 森林や山林の売却はかなり特殊です。通常の不動産とは違ったアプローチが必要になりますので、下記記事で売却方法と注意点をよく確認してください。
参考 農地を売却するには、農業委員会の許可を得る必要があり、農家にしか売却できません。通常の不動産とは異なる手続きが必要なので、下記記事でよく確認してください。
また、すでに有効な確定測量図や境界確認書を保有していて、面積が一致しているのであれば、公簿売買で取引しても問題ないでしょう。
実測売買とは?
土地の面積を、確定測量によって測られた実測面積によって確定させる取引方法を「実測売買」といいます。売買契約時に実測面積が確定していれば、そのまま契約締結、決済引渡しとなります。
もし、売買契約時に実測面積が確定していなかった場合は、とりあえず公簿面積で契約を結び、決済引き渡しまでに実測面積を確定させます。
そして、決済引渡しの際に公簿面積との誤差を清算するといった流れになります。
<実測売買の契約書の実例>
都心の土地のように土地単価が高い場合、少しの誤差でも売買価格に大きく影響します。そのような場合は、実測売買を採用するケースが少なくありません。
<実測売買の重要事項説明書の実例>
公簿売買と実測売買のメリット・デメリット(リスク)や注意点
公簿売買と実測売買のそれぞれの特徴やメリット・デメリット(リスク)、注意点などについてまとめてみました。
公簿売買 | 実測売買 | |
---|---|---|
売買対象面積 | 登記簿上の公簿面積 | 確定測量による実測面積 |
実測による清算 | 行わない | 原則行う ただし、「1平方メートル未満は行わない」などの特約もあり |
必要書類 | 登記簿謄本・地積測量図または現況測量図・敷地概況図など | 確定測量図・境界確認書など |
主な事例 | 山林や農地など土地単価の低い土地売買 | 都市部の土地単価の高い土地売買 |
メリット |
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デメリット(リスク) |
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注意点 |
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引渡し後の境界や面積に関するトラブルを避けたいのであれば、実測売買をお勧めします。基本的に、売主にとって売却する土地は商品ですから、責任をもってリスクのない状態で売却するべきでしょう。
ただし、手元にある資料と整合性が取れていて、信憑性が高いと判断できれば公簿売買でも問題ありません。
いずれの場合も、その内容はさきほど示した実例のように売買契約書や重要事項説明書に反映されますので、買主に対して営業マンによく説明してもらいましょう。
売主として、公簿売買と実測売買の違いを理解し、トラブルのない取引を心掛けてください。
土地売却における3つの測量図
売買取引の対象となる土地を特定するための証拠のひとつとして、売買契約時や決済引渡し時に測量図を提出することがあります。
ひとくちに測量図と言ってもさまざまな種類がありますが、おもに利用されるのが「地積測量図」「現況測量図」「確定測量図」の三つです。
おおまかな違いは以下のとおり。
名称 | 現況測量図 | 地積測量図 | 確定測量図 |
---|---|---|---|
概要 | あるがままの現地を測量したもの | 法務局に登録されている測量図 | 境界確定した測量図 |
境界確認書 | なし | なし | あり |
信用力 | △ | ◯ (平成5年以前のものは△) | ◎ |
それぞれの特徴や違い、注意点などについて、もうすこし詳しく見ていきましょう。
現況測量図
現況測量図は、隣地所有者が立ち会うことなく、あるがままの現地を測量したものです。そのため、実際に境界が確定しているのかどうかはわからないため、信用力はあまりありません。
建物を新築する時、設計をするためには、土地の間口・奥行・敷地の形状・土地面積などが必要となるため、現況測量を行います。
また、道路の中心線から2メートルのセットバックラインを出すためにも現況測量を行うことがあります。
<現況測量図の例>
地積測量図
地積測量図とは、法務局に登録されている測量図です。
土地の分筆などが過去に行われていれば法務局に登録されていますが、登録されていない土地もたくさんあります。
原則、隣地所有者が立ち会いして、境界確認を行ったうえで作成した測量図を登録していますので、一定の信用力はありますが、隣地所有者が署名・押印した境界確認書はついていません。
地積測量図は、作成された年代によって証拠としての信用性が左右されます。
平成5年から平成17年にかけてのものであれば一定の信用性があり、平成17年以降のものであれば信用性は大きいといえます。
なお、平成5年以前のものは、証拠としては信用しない方がよいでしょう。
<地積測量図の例>
確定測量図
自分の土地に接するすべての隣地所有者(道路・公園・水路などの公有地を含む)が立ち会いのうえ、相互に境界を確認します。そのうえで、境界確認書に署名・押印をし、境界確定した測量図が確定測量図です。
同時に越境物(庇・雨樋・エアコン室外機・樹木など)があれば、解消する旨の覚書を交わします。
もっとも信用性が高い測量図ですが、30万~40万円程度の費用と一定の時間を必要とします。
隣地所有者の数や土地の筆数によっては、100万円以上の費用がかかる場合もありますし、官民(道路などの公用地との境界)を確定させるために半年以上時間がかかる場合もあります。
<確定測量図の例>
公簿売買のトラブル事例
公簿売買での取引が完了した後に、トラブルが生じてしまう事例が少なくありません。実際に起きたトラブル事例を見ながら、問題点などを確認しましょう。
トラブル事例1:予定していた建物が建築できない
Aさんは所有している公簿面積150平方メートルの土地を売却しようと、不動産業者へ依頼しました。
しばらくして、延床面積130平方メートルの二世帯住宅を建てるために土地を探していた買主が現れ、住環境の良さに満足し、公簿売買で契約することになりました。
しかし、決済・引渡し後に、買主の依頼したハウスメーカーが現況測量をし、設計に入ろうとしたところ、実際の土地面積は135平方メートルと公簿面積より15平方メートルも小さかったのです。
「予定していたプランで建築できなくなった」ということで、買主とのトラブルに発展してしまったのです。
買主は、目的が果たせない土地だということで契約の白紙撤回を訴え、Aさんと不動産業者は、その主張を受け入れることとなりました。
トラブル事例2:公簿売買で損害賠償請求に・・・
Bさんは、「投資用の賃貸マンションを建てたい」という買主に、公簿面積200平方メートルの土地を公簿売買で売却しました。公簿売買のため、「実測面積と公簿面積に差異が生じたとしても、清算は行わない」という内容でした。
ところが、買主が現況測量をしたところ、土地面積が170平方メートルしかなかったのです。買主からは「誤差分を清算してほしい」との申し入れが入ってきました。
契約条項を根拠として断り続けましたが、買主からは「面積が減った分は道路収用によるものであり、売主はその事実を知っていたにもかかわらず、故意に隠した」として損害賠償請求を起こす旨の回答がありました。
Bさんは道路収用の事実を忘れていただけだったのですが、話し合いの結果、誤差の半額分だけを返還することで合意に至ったのです。
公簿売買のトラブルを防ぐ方法
公簿売買でのトラブル事例を見てみましたが、では、そのようなトラブルを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか?
すこしでもトラブルを防ぐためには、このような対策が効果的です。
- すべての境界標を確認する
- 敷地の周りを測る
- 良い営業マンの対応にかかっている
それぞれについて、以下に詳しく解説します。
すべての境界標を確認する
まずは、現地にてすべての境界標を確認しましょう。四角い土地であれば少なくとも4つの境界標があるはずで、一辺が折れ曲がったりしていれば、そのポイントにも境界標があるはずです。
塀やブロックなどがあれば、おおよその敷地の形状は想定できるので、それにしたがってスコップなどで軽く掘り起こしながら確認してください。
境界標が確認できれば、デジタルカメラやスマートフォンなどで写真を撮っておきましょう。
敷地の周りを測る
境界標が確認できたら、次に境界標や塀・ブロックに沿って敷地の周りのすべての寸法を、巻き尺やコンベックスなどを使って測ります。
こうして、周囲の長さを測り「敷地概況図」を作成すれば、おおよその周囲の寸法と面積が求められますので、公簿面積と照らし合わせてみましょう。
法務局で地積測量図が取得できるのであれば、周りの寸法や面積を照合しましょう。敷地概況図と地積測量図でどのくらいの誤差があるのか、確認できるはずです。
地積測量図がない場合は、敷地概況図を使って買主に説明しましょう。
良い営業マンの対応にかかっている
とはいえ、このような対策は、本来は売却を依頼した不動産業者が行うことです。
良い営業マンなら、物件調査の一環として、あなたが何も言わなくても行ってくれるはずです。もし対応しないようなら促してみてください。それでも動かないようなら要注意です。
公簿売買で契約する際に地積測量図や現況測量図がなかった場合、営業マンには敷地概況図をもとに買主に説明してもらってください。
公簿売買のリスクなど、じゅうぶん理解してもらった上で契約すれば、売主としてのリスクを最小限に抑えることができるはずです。
もし、営業マンが物件調査をしたところ、公簿面積と現地とで一定以上の誤差があった場合は、いったん取引を中止することも検討しましょう。
このように、公簿売買のトラブル防止は、営業マンによる物件調査や売却の際の対応にかかっているといっても過言ではありません。
トラブル防止のためには実測売買
売主としては、トラブル防止を考えると実測売買の方が圧倒的に安心ですが、測量費用がかかるのが悩ましいところですよね。
とはいえ、トラブルになったときの経済的・心理的ダメージは大きいので、測量費用を「安心料」と割り切って、まずは測量会社と費用も含めて相談するとよいでしょう。
ただし、公簿売買のリスクを買主にじゅうぶん説明し、売主としての責任をしっかりと果たしていれば、公簿売買で進めても問題ありません。その点については、売却を依頼した不動産業者としっかりと相談のうえで決定しましょう。
以上、公簿売買のトラブル事例と防ぐ方法!実測売買との違いも分かりやすく解説します… でした。
参考 境界確定するための確定測量の方法や費用を知りたい…という方は下記記事も参考に。確定測量に必要な法務局調査や現地立会などの一連の手順や費用相場、期間などを解説しています。
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