山林売却3つの方法と6つの注意点~流れや価格相場、税金等を詳しく解説!

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山林売却3つの方法と6つの注意点~流れや価格相場、税金等を詳しく解説! 不動産売却

「相続したら、親が所有していた田舎の山林が出てきた・・・」

「使いみちもないし固定資産税もかかるし管理も大変で、どうしよう?」

相続すると、遺産に「山林」が含まれているケースが少なくありません。田舎の親が林業を営んでいた場合もありますし、単純に所有していたケースもあるでしょう。

また1960年代から1980年代にかけて、原野商法といわれる悪徳商法が流行しました。「将来、大きく値上がりする」と言って期待させ、多くの人に価値のない山林を購入させたのです。

親が原野商法に引っかかって山林を所有していた場合、相続した子どもの負担になり困ってしまうケースが少なくありません。

毎年固定資産税もかかるし利用方法も分からないのに管理責任からは逃れられない・・・。かといって、自分で住むこともないなら一刻も早く売却してしまいたいですよね。

「山林売却なんて、どうせ売れないだろう」とあきらめる必要はありません。売る方法があるので、この記事でご説明します。

山林を売却する流れ、方法と注意点、売却価格の相場や税金、諸費用など必要な知識を9つのポイントに分けてみていきましょう。

  • 山林の主な売却先は、林業従事者、キャンプ場として購入したい人、airbnbをやりたい人、田舎暮らし希望者、開発業者など
  • 立木のみ売却する方法と山をまるごと売却する方法がある
  • スムーズに売るには、山林売却に詳しい不動産会社を一括査定サイトで探すのが得策
執筆・監修
この記事の執筆・監修者
福谷陽子

【元弁護士・ライター】 保有資格:司法試験合格、簿記2級
京大法学部在学中に司法試験に合格。10年にわたる弁護士実務経験とライティングスキルを活かして不動産メディアや法律メディアで精力的に執筆中。不動産については売買、賃貸、契約違反、任意売却、投資、離婚、相続、解体や許認可等、あらゆる分野に精通している。弁護士からの信頼も厚く多くの法律事務所サイトの記事も手掛けており、監修案件も多数。You Tubeによる法律情報の発信や弁護士志望者のサポート活動も行っている。

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山林の売却方法に関する基礎知識

山林の売却方法に関する基礎知識

山林売却の基礎知識として、「山林を買いたいのはどういう人なのか?」「必要書類は?」「どのような売り方があるのか?」順に説明していきます。

山林の売却先は?

山林は、住宅地や商業地のように一般的な利活用ができる不動産ではありません。購入希望者はおのずと限定されます。

山林を買いたい」購入希望者は、どのような人が想定されるでしょうか?

買い手として考えられるのは、このような人や事業者です。

  • 地元や周辺の林業事業者
  • キャンプ場として購入する人や事業者
  • airbnb向けの民泊施設を山林に設営する業者
  • 田舎暮らしを希望している人
  • 別荘地を探している人
  • スキー場やゴルフ場、リゾート施設などの開発業者
  • 高齢者施設などの運営業者
  • 自然エネルギー(太陽光発電や風力発電)などの開発業者
  • 国内や海外の投資家

それぞれ具体的に見ていきましょう。

地元や周辺の林業事業者

実際に山林を所有し、間伐や下草刈り、路網整備などを行い、木材を市場に供給している事業者です。周辺で林業を営んでいるなら、購入した山林をそのまま自分の事業に利用できるので、購入を希望するケースがあります。

キャンプ場として購入する人や事業者

最近では野外キャンプが流行しています。自分で使うためのキャンプ場として山林を購入したり、キャンプ場を開こうとする事業者が購入を希望したりするパターンがあります。

airbnb向けの民泊施設を山林に設営する業者

コロナが一段落して、airbnbがあらためて注目されています。

自然体験型のairbnb向け民泊施設を山林に設営する目的で、山林を購入しようとする事業者もあります。

田舎暮らしを希望している人

昨今、田舎暮らしを志向する人が増えています。その中でも「山林を購入して自給自足の暮らしをしたい!」と希望する人が山林を購入し、家を建てたりして自然の中での暮らしを楽しみます。

別荘地を探している人

山林を購入して、山小屋風の別荘や風情ある別荘を建てたいと考える人もいます。

スキー場やゴルフ場、リゾート施設などの開発業者

スキー場やゴルフ場などのリゾート施設の開発を行う事業者が自社のリゾート地を作るために山林を購入するケースもあります。

高齢者施設などの運営業者

高齢者施設は、自然の中で設営されるケースが多々あります。利便性をそれほど求められませんし、良好な環境は入居者によってメリットとなるからです。特に都市部に近い山林であれば、介護施設運営業者に買い取ってもらいやすいでしょう。

自然エネルギー(太陽光発電や風力発電)などの開発業者

太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー発電事業は、太陽や風さえあれば場所を問いません。購入価格の安い山林は投資効率の観点からも格好の事業用地となります。

国内、海外の投資家

投資家が値上がり期待や開発して転売する目的、資源採取目的などで山林を購入するケースもあります。特に中国人などの海外投資家が、綺麗な日本の水資源などを求めて、山を購入したいと考えるケースがみられました。

山林は、水資源だけでなく質の高い木材や木の実、きのこ類、山菜なども手に入れられるので、注目している投資家がいます。

 

このように山林の価値を認めて購入を希望する人はいますが、どんな山林でも良いわけではありません。環境や条件、経済合理性も考慮しなくてはならず、希望者の全体数としてはまだまだ少ない状況です。山林の流動性は高いとはいえません。

山林売却の必要書類

山林を売却するにあたっては、いくつかの書類を集める必要があります。

事前に資料を確認して現状を把握しなければ売れませんし、売却の際に相手先へ提示しなければならないものもあります。

以下の書類を集めましょう。

<山林売却までに確認しておきたい必要書類と取得先>

    • 登記事項証明書(登記簿謄本)・公図(法務局)
    • 森林簿・森林計画図(都道府県)
    • 林地台帳(市区町村)
    • 森林情報(都道府県、市区町村)
    • 固定資産評価証明書(市区町村)
    • 地盤図(地質調査総合センター)
    • その他(地図など)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

登記事項証明書(登記簿謄本)および公図

登記事項証明書には、土地の所在・地番・地目・地積などの山林の基本情報、所有者・所有権以外の抵当権等の権利などの権利に関する情報が記載されています。

公図とは、法務局(登記所)に備え付けられた土地の形状や地番を記した図面です。不動産取引において、土地を特定するために用いられますが、精度の高くない公図もあります

登記事項証明書(登記簿謄本)も公図も、山林の所在地を管轄する法務局で取得できます。

 
<公図の例>
公図の例

森林簿・森林計画図

森林簿は、所有する森林の状態を確認できる書類です。所有者や樹種・林齢・面積・保安林の種類などの情報が記載されています。

ただし森林簿の内容は空中写真や聴き取りなど間接調査によるもので、現地調査や実測は実施されていません。

森林計画図は、森林簿の番号が記されている地図のことで、縮尺は5,000分の1です。

森林簿の写しも森林計画図も、山林が所在する都道府県に申請すると取得できます。

林地台帳

林地台帳は、森林の所有者の氏名、住所、所在、地番、地目、面積、境界測量の実施状況などの情報が記載されている資料です。

平成28年5月の森林法の一部改正によって制定された新しい制度で、市(区)町村が統一基準に基づいて情報を整備・公表します。

入手の際には森林のある地域の自治体へ申請しましょう。

 
<森林簿と林地台帳の違い>

種類作業主体森林の基本単位主な記載内容
森林簿都道府県林小班森林資源情報や施業履歴など
林地台帳市(区)町村地番土地の所有者や境界情報など

 
<林地台帳の記載事項(案)>
林地台帳の記載事項(案)
引用 林野庁 林地台帳制度

森林情報

各自治体が発表しているエリア内の森林に関する総合情報です。自治体のホームページで確認できるケースが多数です。

また「森林情報管理システム」を使うと、ネットで簡単に森林基本図や森林計画図、森林簿などの情報を得られます。

固定資産評価証明書

山林の固定資産評価額を知ることができる書類です。固定資産評価額は固定資産税課税基準となる価額で実際の流通価額とは異なりますが、参考値として把握しておきましょう。

地盤図

地盤図は山林の地質の状況を示す地図です。地盤が不安定だと買い主は安心して購入できないので、売却の際に地盤図の提出を求められるケースがよくあります。地質調査総合センターで確認できます。

山林売却を考えたときの2つの選択肢

山林を売却する方法には、以下の2つの選択肢があります。

  • 立木のみ売却する
  • 山を丸ごと売却する

立木のみ売却する

土地はそのまま売らずに、立木のみを売却する方法です。林業を営んでいる方なら、この方法を選択できます。

ただし立木に価値がなければ売れないので、以下の条件を満たす必要があります。

  • 間伐などにより管理された、質の良い山林に生息する樹木であること
  • 伐採した樹木を山から搬出するための道路が整備されていること
  • 木材加工する製材所までの輸送手段などが確保できていること

雑然と生えているだけの立木には、ほとんど価値がありません。そのままでは売却できないので、上記条件を満たしたうえで木材に加工して売却しましょう。

山を丸ごと売却する

立木や道、山菜などの資源とともに山林地をまるごと売却する方法です。通常の不動産売却と同じ売り方であり、林業を営む必要はありません。

立木のみを売却するより、山をまるごと売却する方が、ハードルは低くなります。林業を営む予定がないなら山林を土地ごと売却する方向で進めましょう。

山林売却の3つの方法、相談先

山林売却の3つの方法、相談先

具体的に山林を売却する方法、サポートしてくれる相談先を3つ示します。

  • 不動産業者
  • 森林組合
  • 専門斡旋サイト

それぞれ詳しく見ていきましょう。

不動産業者

山林も不動産ですので、不動産業者へ相談すると売買の仲介サポートを受けられます。ただし山林売買には専門知識が必要で、手続きに精通していなければならず、どの不動産業者でもよいわけではありません。

良い不動産業者を選ぶ方法

まずは山林の付近にある不動産業者に相談する方法があります。地元の業者であれば山林の状況やニーズを把握しており、山林売却のスキルも持っているものです。遠方で出向けなければ、とりあえず電話で相談してみましょう。

心当たりの業者がない場合、不動産一括査定サイトを利用する方法がおすすめです。

とくに山林を扱っている一括査定サービスを利用すれば査定価格まで確認できて、だいたいの売却価額の予想を立てられます。山林売却に実績のある不動産業者からの提案を受けられるケースもあります。

山林付近の不動産業者に確認する前に、相場感を把握するために利用してみるのもよいでしょう。

⇒ 山林を扱っている無料の一括査定サービスを見てみる

森林組合

森林組合とは、地域内の森林を管理する団体です。

都道府県単位で全国にもうけられていて、たいていはエリア内の山林の売買をサポートしてくれます。

山林の立地するエリアの森林組合に問い合わせて、近辺における取引状況や購入希望者の有無、近隣の所有者が購入希望を持っていないかなど、確認してみてください。

山林専門の売買サイト

山林売買に特化したポータルサイトである「山林バンク」や「山いちば」などに登録してみる方法もあります。

山林売買に詳しい専門家に相談してアドバイスを受けられたり、他の売りに出ている山林物件の情報も確認できたりして、取引の動向がわかりますし役立つ情報も得られます。

山林売却の流れ

山林を売却するときには、一般的に以下の流れで進めます。

山林売却の流れ

STEP1 山林の状況を確認する

まずは所有する山林の状況を把握しなければなりません。

広さや形状、樹木の種類や樹齢、管理状況、道路の整備状況、地盤などについて、登記簿や森林簿などの必要書類を取り寄せて調査しましょう。

STEP2 売却方法を決める

次に「どのようにして売却するのか」決めなければなりません。

隣地の所有者に売るなら、自分たちだけでも取引できます。ただし個人間取引をするとトラブルのリスクが高まります。安全を帰するためには、不動産会社を仲介に入れるようおすすめします。

森林組合に相談して買い手をあっせんしてもらったり、山いちばなどの専門サイトで取引相手を見つけたりしてもかまいません。

STEP3 査定と境界確定

山林がどのくらいの金額で売れるのか、不動産業者に査定してもらいましょう。

隣地との境界が不明な場合、隣地所有者に立ち会ってもらって境界確認の作業を行う必要もあります。

STEP4 条件交渉をする

買い手候補が見つかったら、条件交渉しましょう。

価格や代金支払い方法、所有権移転日などを決めます。山林の場合、造成工事をしないでそのまま売るのであれば「現況有姿」として売却するのが一般的です。

土地の売却方法には実測面積を基準とする「実測売買」と登記簿の記載を前提として面積を決める「公簿売買」の2種類がありますが、山林の場合には「公簿売買」が選択されるケースが多数です。

また契約の際、「売主の契約不適合責任」は免除してもらうようお勧めします。

自分で交渉するのは負担になりますので、不動産会社に相談しながら進めましょう。

STEP5 売買契約を締結する

条件が整ったら売買契約書を作成しましょう。多くの場合、契約すると手付金が支払われます。その後は自由なキャンセルができなくなり、解約する際には手付金の2倍の金額を買い主へ返金しなければなりません。

STEP6 決済と引き渡し

契約書に定めたとおり、代金の決済と山林の引き渡しを行います。所有権移転登記を終えれば山林売却が完了します。

山林売却価格の相場

山林売却価格の相場

山林を売却すると、どれぐらいの価格で売れるのでしょうか?

山林は交通利便性のよくない地方にあるケースが多く、土地面積も大きいため、どうしても単価が低くなりがちです。ただし場所によっては思ったより高く売れるケースもあります。

山林の売却価格の相場がどのように形成されるのか説明していきます。

山林の種類と相場

ひとくちに「山林」といっても、どのような地域にあるのかによって価格が変わります。

山林は以下の4種類に分類できて、それぞれ相場価格が異なります。

種類特徴価格動向相場の目安(土地単価)
都市近郊林地市街地に近く、宅地化の可能性もあり約1,000/㎡円~5,000円/㎡
農村林地農村部に近く、いわゆる里山などやや高約300/㎡円未満
林業本場林地林業を主としているやや低約100/㎡円未満
山村奥地林地山の奥深くで、交通不便約100/㎡円未満

都市部に近ければ高く売りやすくなりますが、地方や山奥になると価額が下がります。たとえば交通アクセスがよく、宅地化の可能性もあるような市街地の山林であれば、土地単価5,000円/平方メートルのような比較的高い価格がつくこともあります。

いっぽう、山奥にあって人の往来がなく「そこに行くことすら困難な土地」の場合、土地単価100円/平方メートル未満となってしまうケースもよくあります。

交通や社会的な利便性が売却価格の要因になる点は、通常の不動産と変わりません。

なお「相場の目安」はあくまでも参考値です。必ずこの価格で売却できるという保証はありません。

また都市計画法による区分で考えると、市街地に近い方から順に、

市街化区域→市街化調整区域→非線引き区域→準都市計画区域→都市計画区域外

に分類されます。

市街化区域および市街化調整区域に属する山林であれば、購入を検討する人が多くなるので、山林マーケットの中では有利です 。

おおよその土地の相場は、国土交通省が運営する「標準地・基準地検索システム」を利用して調べることができますので、確認してみてください。

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山林の価格を左右する要因

山林の価格は山林の種類以外に

  • 山林に生えている樹木の品質
  • 樹種や樹齢
  • 間伐などの樹木の手入れ状況
  • 日照や雨量などの状況
  • 標高や地勢などの状況
  • 土壌や土層の状態
  • 搬出路の有無や整備状況
  • 国道や市道までの距離
  • 公法上の規制や制限

などの要素によっても影響を受けます。売却前に、山林の実際の状況や取り巻く環境などについてもよく確認しましょう。

山林売却にかかる税金(所得税と住民税)

山林売却にかかる税金(所得税と住民税)

山林を売却して利益が出ると、税金がかかります。税額によって手取り額が大きく変わるので、売却時には税額のシミュレーションもしておきましょう。

山林売却時にかかってくる税金については、所得の計算方法が通常の不動産と違いますので注意しなければなりません。

立木部分は山林所得、土地部分は譲渡所得

山林売却にかかる課税方法は、立木部分と土地部分で異なります。

立木部分については「山林所得」、土地部分については「譲渡所得」となり、売却によって利益を得られたらそれぞれの所得について、申告・納税をしなければなりません。

山林所得とは、立木を譲渡することによって生ずる所得です。ただし山林を取得してから5年以内に立木を譲渡した場合、山林所得ではなく事業所得あるいは雑所得になります。

譲渡所得は、山を丸ごと譲渡した場合の「土地部分」の売却利益に相当する所得を指します。

山林の売買契約書を作成するとき、あらかじめ立木部分と土地部分に売買価格を分けておくと、申告の時に便利です。住宅売買の際に「土地部分と建物部分に分ける」のと似た考え方です。

  • 立木部分については「山林所得」
  • →山林取得から5年以内に立木を譲渡した場合、「事業所得」か「雑所得」
  • 土地部分については「譲渡所得」

税金の計算方法

山林所得の計算方法

山林所得計算の際には以下の3つがポイントになります。

  • 山林所得の計算式
  • 必要経費
  • 5分5乗課税方式
山林所得の計算式

山林所得の計算式は以下の通りです。

<山林所得の計算式>
山林所得=総収入金額-必要経費(譲渡にかかった費用と維持管理にかかった費用)-特別控除額(最高50万円)

※場合により青色申告特別控除額(最高10万円)や森林計画特別控除額をさらに控除できます。

 
総収入金額とは山林の売却価格です。

必要経費は売却にかかる伐採費、搬出費、仲介手数料や境界確定費用などの売却費用、植林費(取得費)、下刈費(育成費)、伐採費、搬出費などの維持管理にかかる費用が該当します。

概算経費控除

必要経費の計算の際、概算経費控除といわれる特例を適用できます。

概算経費控除とは、伐採または譲渡した年の15年前の12月31日以前から所有していた山林の場合、詳細な経費の計算をせずに概算で算定する方法です。

<概算経費控除による必要経費>
概算経費=(総収入金額-伐採費ほか譲渡費用)×50%+伐採費ほか譲渡費用

概算経費控除を適用すると、売却価額から譲渡にかかった伐採費や仲介手数料などの経費を引いた金額の50%を育成費や取得費などの維持管理費用とみなし、その金額を必要経費にできます。

これまでどのくらい維持管理の費用がかかったか、実際の数値を調べる必要がありません。

相続した山林などでこれまでの管理状況がわからない場合、概算経費控除を選択しましょう。これまでの管理費が分かる場合でも、税額計算で有利になるなら概算経費控除を用いるのが得策です。

森林計画特別控除

山林所得計算の際、森林計画特別控除が適用される場合もあります。

森林計画特別控除とは、山林の所有者や委託を受けたものが、5年を単位とした森林施業や保護を目的として作成する計画です。

森林経営計画によって山林を伐採したり、立木を譲渡したりすると、森林計画特別控除としてさらに所得を減額してもらえる可能性があります。

5分5乗課税方式

山林所得に対する税額は、他の所得と合算せずに5分5乗課税方式という特別な方式で計算します。

<5分5乗課税方式の計算方法>
山林所得税額 =山林所得金額×1/5×所得税率×5

 
たとえば山林所得額が300万円の場合、300万円×5分の1×5%×5=15万円となります。

5分5乗課税方式を適用する目的は、林業の特性に対する配慮です。

山林所得は長年かけて育成した立木の売却によって発生しますが、税務の会計年度は1年単位です。長年かけて育てた立木売却による利益を一気に計上すると極めて高額となり、林業従事者を圧迫してしまうおそれが高まります。

そこで林業の特性に配慮して特殊な山林所得が適用されます。

なお山林所得が赤字になった場合、不動産所得や事業所得など他の所得と損益通算できます。計算が複雑なので、損益通算したいときは最寄りの税務署か税理士などの専門家に相談しましょう。

所有期間によって異なる所得

山林所得が適用されるのは「山林を、5年を超えて所有してから売却する場合」に限られます。5年以下の場合、事業所得または雑所得となります。

  • 山林保有や利用が事業と呼べる規模の場合には事業所得
  • 山林保有や利用が事業規模に達していない場合には雑所得

相続した山林の場合、被相続人の所有期間も「所有期間」に含めて計算します。被相続人の所有期間が5年を超えていたら山林所得を適用できます。

山林所得と住民税

山林所得が発生した場合、住民税もかかります。住民税は「山林所得×10%」となります。給与から天引きされない場合、売却した次の年に自治体から納付書が送られてくるので、資金を用意しておきましょう。

譲渡所得税と住民税の計算方法

山林の「土地部分」を売却したときの譲渡所得の計算方法は、通常の住居などの不動産と同様です。

<譲渡所得の計算式>
譲渡所得(譲渡益)=売却価格-取得費(購入したときの価格やかかった経費)-譲渡費用(売却にかかった仲介手数料や諸費用など)

取得費が不明な場合、売却価格の5%を取得費として計上できます。

<譲渡所得税の計算式>
譲渡所得税=譲渡所得×譲渡所得税率
長期譲渡所得と短期譲渡所得

譲渡所得税率は、短期譲渡所得と長期譲渡所得かで異なります。

短期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日における所有期間が5年以下の不動産の譲渡による所得です。税率は、所得税+住民税の合計で39.63%と、高額になります。

長期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を超える不動産の譲渡による所得です。税率は所得税+住民税の合計で20.315%となり、大幅に下がります。

<譲渡した年の1月1日における所有期間によって異なる税率>

  • 5年以下 → 短期譲渡所得 → 所得税+住民税の合計で39.63%
  • 5年超え → 長期譲渡所得 → 所得税+住民税の合計で20.315%

山林を相続した場合、被相続人(亡くなった人)の取得時期を承継するため、被相続人が亡くなるまでに5年を超えてその不動産を所有していれば、相続開始後すぐに売却しても長期譲渡所得として申告できます。

 
不動産売却時にかかってくる税金と節税ノウハウに関しては、下記記事で詳しく解説しています。節税できるものならしないと損なので、ぜひご確認ください。

404 NOT FOUND | 土地活ナビ | 土地活用と不動産売却の成功法則

山林売却でかかる費用

山林売却でかかる費用

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 仲介手数料

印紙税

印紙税は山林の売買契約書に貼付して納税する税金です。契約金額により税額が決められています。

令和4年3月31日までに契約書を作成した場合、軽減措置が適用されて以下の金額となります。

契約金額軽減後の印紙税額
1万円未満のもの非課税
1万円以上10万円以下のもの200円
10万円を超え50万円以下のもの200円
50万円を超え100万円以下のもの500円
100万円を超え500万円以下のもの1,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの1万円
5,000万円を超え1億円以下のもの3万円
1億円を超え5億円以下のもの6万円
5億円を超え10億円以下のもの16万円
10億円を超え50億円以下のもの32万円
50億円を超えるもの48万円

山林売買は通常の不動産と違い、高額な取引になるケースが少ないため、印紙税の負担はあまり心配しなくてもよいでしょう。

登録免許税

登録免許税は、法務局で山林の所有権移転登記を行う際にかかる税金(手数料)です。

所有権移転にかかる登録免許税の金額=固定資産評価額×1.5%

登録免許税率は原則3%ですが、令和3年3月31日までに売却した場合には1.5%となる軽減措置が適用されます。

通常は買主負担になるため、売主側で負担する必要はありません。

仲介手数料

売却を不動産業者へ依頼した場合、成約したら仲介手数料を請求されるのが一般的です。仲介手数料には消費税も課税されます。

宅建法上の仲介手数料の上限は以下のとおりとなっていて、多くの不動産会社は上限額を既定としています。

<仲介手数料の上限額一覧表>

売買価格仲介手数料の上限
200万円以下売却価額×5%+消費税
200万円から400万円まで売却価額×4%+2万円+消費税
400万円を超える部分売却価額×3%+6万円+消費税

 
ただし山林は宅地ではないので、本来は宅地建物取引業法が適用されません。上記より高額な手数料を請求しても違法ではないため、中には10%などの高額な手数料を要求してくる業者もいます。

そういった業者は良心的とはいえません。

多くの不動産業者は山林売却の際にも宅建業法上の上限に従っているので、上記を超える手数料がかかる業者には仲介を依頼しない方がよいでしょう。

 
下記記事で仲介手数料に関する基本的な知識を確認しておいてください。

不動産売却時の仲介手数料の上限と売り主が注意するべき4つのこと
不動産売買において、不動産会社(宅建業者)が受け取れる仲介手数料には法的に上限があります。仲介手数料の計算方法や支払いタイミング、値引きなどを解説。売買金額を入力しただけで仲介手数料の上限が分かる「仲介手数料シミュレーター」もあります。

山林売却における6つの注意点

山林売却における6つの注意点

最後に山林売却に特有の6つの注意点について説明します。売却活動前に、あらかじめ理解しておきましょう。

  • マーケットが狭くて売りにくい
  • 熱心に取り組む不動産業者が限られる
  • 境界確定に時間がかかる
  • 測量コストが割に合わないため公簿売買が一般的
  • 宅建業法の対象外
  • 買い手主導となるケースも多い

それぞれについて詳しく説明していきます。

マーケットが狭くて売りにくい

山林の売買マーケットは非常に閉鎖的で、流動性が極めて低くなっています。通常の住宅地などと違い、山林を購入したい見込客は限られます。取引事例が少ないため相場も形成されにくく、買い手を見つけるのは簡単ではありません。

都市部に近い場所ならまだしも、地方の山奥では売却に難儀することが予想されます。最低でも半年、場合によっては1年たっても成約しないこともあります。

長期戦を覚悟しておきましょう。

熱心に取り組む不動産業者が限られる

山林売却に熱心に取り組む不動産業者は少数です。

売却活動に手間がかかる割に価額が低くなり、不動産業者にとってメリットが小さいためです。

そもそも仲介を引き受けてもらえないこともありますし、引き受けてもらえても後回しにされて放置される可能性があります。

山林売却の仲介を依頼する不動産業者を選定するときには、「実績があって山林に詳しい業者」「積極的に取引を進めてくれる業者」を見極めましょう。

境界確定に時間がかかる

山林には、隣地との境界が定まっていないものも多数あります。

境界確定をするには、土地家屋調査士に依頼して隣地の所有者に立会ってもらい、お互いに境界を確認して書面を作成しなければなりません。

ただ山林は数多くの区画(筆)に分かれて隣地所有者が多数となるケースも多く、立会いのスケジュール調整が難しくなりがちです。

時間がかかる可能性があるので、できるだけ早めに隣地所有者に声をかけて、境界確認作業に着手しましょう。

測量コストが割に合わないため公簿売買が一般的

山林の面積は広大で、区画(筆)も多数に分かれていることが多く、測量には膨大な時間と費用がかかるケースが多数です。

そのため確定測量を伴う実測面積による実測売買ではなく、登記簿上の面積を前提とした公簿売買が一般的です。

売買契約締結時に意識してください。

 
確定測量の方法や費用に関して、興味がある方は下記記事をご覧ください。

不動産(土地)の 売却に境界確定は必要か?確定測量の方法と費用を分かりやすく解説します
不動産売却の際に境界確定が必要か?測量費用の相場は?そんな疑問をお持ちではありませんか?本記事では、境界確定が必要な理由と公簿売買と実測売買の違い、境界確定のための確定測量の方法や費用などについて詳しく解説します。境界確定でお悩みの方は必見です。

宅建業法の対象外

山林売却は宅地建物取引業法の対象となりません。宅建士以外の素人が仲介をしてもかまいませんし、仲介手数料についての法律上の制限もありません。

そこで無資格の人が仲介として介入しようとしてくる可能性があります。悪質な相手であれば、何もサポートをしてもらえないのに高額な手数料だけ請求されるので、注意が必要です。

また不動産業者であっても、悪質業者であれば10%などの高額な仲介手数料を設定しようとするものがあります。

山林売却の仲介を依頼するなら「仲介手数料が宅建業法の上限以下となっている、宅建士の資格を持った不動産業者」を選びましょう。

買い手主導となるケースも多い

山林の売買マーケットは狭くて不安定なため、買い手を見つけるのは困難です。価格相場も形成されにくく、売買価格は売り手と買い手の「交渉」によって定まるのが一般的です。

需要が少ないためにどうしても買い手優位の交渉になり、売却価格が割安になるケースも多いことも、あらかじめ理解しておきましょう。

山林売却の2つのコツ

山林を相続して活用する目的がないなら、早めに売却すべきです。

所有していても、管理や固定資産税などのコストだけがかかるだけだからです。できるだけ早く現金に換えて、他の資産運用に活かすのが得策といえます。

山林を売るコツは、2つあります。

  • タイミングを逃さない
  • 良い不動産業者の選定

タイミングを逃さない

1つはタイミングを逃さないことです。

「売ろうかな」と思ったらすぐに不動産会社や森林組合などに相談して買い手を見つけてもらい、候補が見つかったら躊躇せずに交渉を進めましょう。

納得できる条件が出てきたら、早期に売買契約を締結して売却を完了するようおすすめします。迷っているとタイミングを逃し、次のチャンスがいつ訪れるかわかりません。

不動産業者の選定

2つ目は良い不動産業者の選定です。

個人間取引はトラブルのもとなので、おすすめできません。山林売買であっても必ず不動産業者を通しましょう。

ただ山林を取り扱う不動産業者はそもそも多くはありません。また宅建業法が適用されないため、規制が及びにくく悪徳業者や無資格の個人や業者も暗躍しています。

売却を依頼するなら、信頼できる「山林取り扱い実績の高い不動産業者」を選定すべきです。もちろん仲介手数料の価額も契約前にしっかり確認する必要があります。不動産一括査定を利用すると山林に強い不動産業者を探しやすいのでおすすめです。

不動産一括査定サイト「イエイ」では、山林も物件タイプとして扱っていますので、こちらから不動産会社を探してみるとよいでしょう。

 
以上、山林売却3つの方法と6つの注意点~流れや価格相場、税金等を詳しく解説!… でした。

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