「売りに出した家になかなか買い手がつかない…」
そんなときに活用したいのが「ホームステージング」です。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、中古住宅の流通が進んでいる欧米では、住宅売却の際に当たり前のように行われている販売手法です。
ホームステージングを活用した人からは、「家が早く売れた」「相場より高く売れた」「どんどん内覧申込が入った」といった声が聞かれますが、実態はどうなのでしょうか?
そこで今回は、ホームステージングの費用や、メリット・注意点などについて詳しく解説します。ホームステージングに興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
ホームステージングとは?
ホームステージングとは、売却を予定している空室状態の中古物件(主に中古マンション)に、家具やインテリア、小物などをセンス良く配置することにより、新築マンションのモデルルームのような演出を行う販売手法のことをいいます。
いわゆるインテリアコーディネートとは一線を画す手法です。
ホームステージングは、プロのホームステージャーによって物件の購入層を明確にイメージし、購入層をターゲットとした演出をすることで物件の価値や魅力を最大限引き出します。
その結果、購入希望者の購入意欲を高めて販売の促進につなげるのです。
欧米では一般的なホームステージング
ホームステージングは、日本ではまだあまりなじみのない言葉ですが、その歴史は1970年代のアメリカが発祥とされています。
その後、中古住宅の流通が旺盛なイギリス・フランス・カナダなどの欧米諸国に広がり、特にスウェーデンでは80%以上の物件でホームステージングが活用されています。
住宅流通数の90%以上が中古のホームステージング先進国・アメリカでは、不動産ポータルサイトで物件を検索してみると、どの物件も魅力的な家具や小物を使って空間を演出しており、日本のような空室状態の物件はほとんどありません。
「ここに住みたい!」「ここで質の良い生活を送りたい!」と思わせるような物件ばかりが並んでおり、ホームステージングが完全に定着していることがわかります。
近年は大手日本企業も取り組むホームステージング
近年、日本にもその手法が上陸し、2013年には一般社団法人日本ホームステージング協会が設立され、ホームステージングの認定資格者であるホームステージャーを輩出しています。
また、住友不動産販売や野村不動産アーバンネットなどの大手不動産仲介業者をはじめとして、ニトリやリクシルなど住まいや暮らしに関わるさまざまな企業がホームステージングに関する情報を発信しています。
ホームステージングが、住宅を購入または賃貸するエンドユーザーに広がることによって、中古住宅の流通や空き家の利活用に大きな効果を及ぼすと期待されています。
<ホームステージングの活用イメージ>
ホームステージングの手法とは?
次に、ホームステージングで使われる手法について説明します。
まずホームステージングにより演出する範囲ですが、住戸全体を行う場合と玄関やリビングルーム、水回り(キッチン・浴室・洗面所・トイレ)など部分的に行う場合の2通りあります。
主流は部分的なホームステージング
住戸全体を演出する場合は、範囲が広くなることによりコストが大きくなるため、現状では部分的なホームステージングが主流と言えます。
しかし、部分的に行った場合でも購入希望者に与える印象はまったく違うものになります。
家具・照明・小物類・カーテンを中心としたアイテムを使用して、購入希望者の家族構成やライフスタイルを想定したうえで、生活のストーリーに作り出して住空間を演出します。
目的は生活イメージを体感してもらうこと
内覧に訪れた購入希望者に「ここに住みたい!こんな生活を望んでいた!」と思ってもらえることが狙いです。
例としては、明るく清潔な玄関に、スタイリッシュな小物や絵画を飾って気分を盛り上げ、ポプリやアロマなどで香りも演出しながらメインともいえるリビングルームへと導きます。
リビングルームは最大の見せ場ですので、物件のグレードに合わせた家具を配置し、観葉植物や照明、花、香り、BGMなどで五感に訴える総合的演出をします。
また、浴室や洗面所などの水回りでは、場合によっては浴槽に水色の水を張ってさわやかさや清潔感を演出します。洗面所にもセンスの良い小物やタオル類などを置き、よりリアルで質の良い生活イメージを持たせます。
このようにホームステージングは、新築のモデルルームと違って、購入希望者が「実際に住むかもしれない新居」を体感できるということが大きな魅力のひとつです。
<売却中物件のホームステージングイメージ>
売主にとってのホームステージングのメリット
続いて、ホームステージングを行った場合の売主にとってのメリットについて、確認してみましょう。
- 早く売却できる
- 高く売却できる
- 競合物件との差別化を図れる
- 買い手が購入後の生活をイメージしやすい
- 居住中物件でもホームステージングできる
早く売却できる
ホームステージングを活用した場合、売却までの期間が早くなるメリットがあります。
一般社団法人日本ホームステージング協会による「ホームステージング白書2017」(PDF)では、中古戸建および中古マンション全体にホームステージングをした場合、販売までの平均日数は40日となっています。
ホームステージングをしない場合は平均124日ですので、約3分の1の日数で成約していることとなります。
物件種類別に見ると、中古戸建てについてはホームステージングをした場合は平均37日で販売、しなかった場合は210日と約6倍の速さです。中古マンションでは、した場合は平均42日、しなかった場合は88日と約2倍の速さです。
<販売までの平均日数>
※引用元:ホームステージング白書2017(PDF)
購入希望者にとって、何もないガランとした空室を内覧しても新しい生活のイメージを持つことは難しいでしょう。
ホームステージングが活用されていれば、新居での新生活に夢や自分なりの想いを膨らませることができるため、購入に対するモチベーションは高くなります。
その結果、成約までの日数が短縮でき、早く売却できるのです。
高く売却できる
株式会社東京カンテイが2017年5月にリリースした「中古マンションの価格乖離率(首都圏)」によると、中古マンションの売買においては販売期間が長いほど価格が下がるという結果が出ています。
<中古マンションの価格乖離率(首都圏)>
※引用元:株式会社東京カンテイ 中古マンションの価格乖離率(首都圏)(PDF)
このように、売却価格の下落を防ぐためには成約までの期間を短縮することが大切ですが、ホームステージングを活用すれば早く売却できるため、結果として高く売却できることにつながります。
また、ホームステージングを活用した場合は、内覧希望者が多くなるので競争原理が働きます。そのため、価格交渉に対しても強気な対応が取れるため、相場以上の価格で高く売却できる可能性があります。
前出の「ホームステージング白書2017」においても、「ホームステージングを活用した場合は、平均査定額の4,500万円より平均約23万円(約0.5%)高く売れている」という結果が確認できます。
<販売価格>
※引用元:ホームステージング白書2017(PDF)
競合物件との差別化を図れる
現在ではほとんどの購入希望者が、事前にインターネットで物件情報や物件写真を確認したうえで内覧に来ます。
その際、ネット上で確認できる写真や動画が空室状態の物件とホームステージングが活用された物件では、購入希望者へのインパクトには大きな差が生まれます。
スタイリッシュで洗練された空間が演出されている物件であれば「一度見てみたい」「見るだけでも行ってみよう」という気持ちになるでしょう。
こうして多くの内覧希望者に実際に物件を見てもらえば、空室状態の物件より確実に良い印象を持ってもらえるはずです。競合物件との差別化が図れ、多少の価格差くらいであればこちらの物件に誘導できるでしょう。
買い手が購入後の生活をイメージしやすい
物件が空室状態の場合、購入希望者は家具や生活用品を運び入れた状態がわかりにくく、実際に家具が入るのかどうか、どのように配置したらよいのかなど、その物件における新生活をイメージすることが難しいでしょう。
ホームステージングされた状態であれば、実際に家具や生活用品が配置されていますので、新生活をイメージしにくいという不安は解消されます。
そのうえ、ホームステージャーが提案する住まいの演出を体感することにより、インテリアや小物などの使い方、効果的な家具の配置方法などを参考にでき、購入希望者にもメリットがあるため購入決断の背中を押してくれる効果もあります。
居住中物件でもホームステージングできる
ホームステージングは空室物件だけでなく、居住中の物件でも可能です。
ホームステージャーが物件内を確認して、掃除や整理整頓をして清潔感を出し、既存家具を活かしたレイアウト変更をするほか、絵画や小物類などでポイントとなる演出を行います。
居住中物件は生活感が出てしまうという弱点があるのですが、ホームステージングを活用することにより、そうした弱点をカバーすることができます。
さらに、インターネットなどで公開する室内写真もオシャレな写真となるため、居住中物件であっても内覧希望者を増やすことができ、高く早く売却できる可能性が広がります。
ホームステージングの注意点
ホームステージングを活用することによって、高く早い売却が可能となりますが、それなりに高額な費用が発生するため、その費用を回収できないリスクも生まれてしまいます。
ここでは、そうしたリスクを最小限にするための注意点について説明します。
- 事前に費用分を回収できるかを検証する
- 購入層目線のホームステージングを活用する
- 入居中のホームステージングについて
事前に費用分を回収できるかを検証する
ホームステージングにはそれなりに高額な費用が発生します。
費用相場については次章で説明しますが、基本的に売却価格に上乗せして回収するしか方法がありません。
そのため、値下げ交渉などにより高く売れない場合は、ホームステージングにかけた費用分を回収できなくなるリスクがあります。
ホームステージングを活用すれば高く売れる可能性は広がりますが、必ず高く売れるという保証はないため、費用分の損失が出ることはあらかじめ注意が必要です。
事前に不動産業者と費用分を上乗せした価格設定が可能かどうか、よく相談しておきましょう。
購入層目線のホームステージングを活用する
プロのホームステージャーによりホームステージングは行われますので、購入層をターゲットとしたレイアウトやデザインが意識的に採用されます。
それによりアピール力が強い魅力的な物件になるのですが、あまりにも過剰に演出してしまうと逆に購入意欲を下げてしまう可能性もあります。
なぜなら、購入希望者の中には自分好みのリフォームや自分で思い描いたコーディネートを検討したい人もいるため、過剰なホームステージングが押し付けがましく逆効果になってしまう可能性があるからです。
どの程度までホームステージングを行うのかについては、事前に不動産業者やホームステージャーを交えて、ターゲットとする購入層やコンセプトなどを確認しておく必要があるでしょう。
売主として物件の特徴や住環境、周辺住民の構成や属性などをホームステージャーにしっかりと伝えたうえで、効果的な活用プランを提案してもらいましょう。
入居中のホームステージングについて
前章で入居中でもホームステージングは可能であると説明しましたが、室内のレイアウト変更や一部生活用品の撤去・保管などのため、物件が売却できるまで生活に不便が生じる可能性があります。
また、レンタルの家具や小物類などが設置されているため、生活上の行動に気を遣ってしまい、窮屈さを感じることもあるでしょう。
「物件の売却を成功させるためには仕方がない」と割り切って考えることが大切です。
ホームステージングの費用相場
前出の「ホームステージング白書2017」によると、ホームステージングの平均費用は約18万円となっており、15万円以上20万円以下の価格帯が最も多くなっています。
5万円以下も全体の約11%を占めていますが、相談だけであれば3~5万円というプランがあるからでしょう。この表から推察すると、おおむね15万円~35万円程度の費用が一般的と思われます。
<ホームステージング費用分布>
※引用元:ホームステージング白書2017(PDF)
ホームステージングを行う会社は、大手不動産仲介会社と提携している会社や家具や生活用品を扱う会社のほか、独立系の専門会社などがあります。
現状では日本はホームステージング後進国であり、まだまだ事業者が少なく市場は整備されていないため、価格競争などは生じていません。しかし、今後の市場活性化や新規事業者の参入などにより価格の低下も考えられます。
原則的には、査定価格が高い物件の方が低い物件より、ホームステージングの活用効果が高いと言えます。
特に1,000万円未満の物件では、ホームステージングの活用効果で費用を回収することは難しいと考えられますが、販売促進のためのコストと割り切れれば活用してもよいでしょう。
- 価格競争等により今後ホームステージングの価格低下も期待できる
- 査定価格が高い物件ほどホームステージングの活用効果が高い
賢く効果的なホームステージングを行いましょう
現在、日本では空き家対策やホームインスペクションの導入など、中古住宅の流通を促進する政策がいろいろと取られています。
欧米並みの中古住宅流通率まで伸びるのかはわかりませんが、今以上の一定の流通数は見込めると考えられるので、ホームステージング市場も拡大していくことでしょう。
ただし、ホームステージングの活用効果は保証されているものではなく、事前のリサーチやプランが欠かせません。
自分の物件がホームステージングにより高く早く売れる物件なのか、購入層のターゲットは間違っていないか、かけた費用の回収見込みはあるのか、など不動産業者やホームステージャーと相談のうえ決定しましょう。
そのうえで、賢く効果的なホームステージングの活用を行ってください。
以上、3倍速く売れるホームステージングとは?メリットや注意点、費用相場を徹底解説!…でした。
参考 費用をかけてまでホームステージングはちょっと…という方は下記記事も参考に。内覧のコツを詳しく解説しています。内覧対策を念入りに行うだけでも、成約する確率は格段にアップしますよ。
不動産一括査定サービスの利用も忘れずに!
価格査定と不動産会社探しには、複数の会社にいっぺんに査定依頼できる不動産一括査定サービスが便利。今や不動産や自動車の売却には一括査定サービスを使うのが常識です。 
一般的な家や土地なら、大手不動産ポータルサイトのHOME4U不動産売却の一括査定で問題ありません。特殊な物件に関しては、「物件タイプ別不動産一括査定サービスの選び方」をご確認ください。