不動産業界における「売り止め」の意味をご存知ですか?
ストレートに解釈するなら、「売るのをやめた」とか「売るのを中断した」という意味ですよね。
しかし、不動産業界では、業者による悪質な裏切り行為ともいえる「売り止め」があるんです。この「売り止め」によって、売主は自分の知らないうちに損をさせられていることもあるので要注意ですよ!
今回は、そんな「売り止め」の意味や、不動産業界での実態、売り止めを防ぐ方法などを徹底解説します。この実態を知るまでは、不動産の売却活動は始めないでください。
最後まで読んで知識武装しておけば、悪質業者による「売り止め」被害を防げますよ。
SRE不動産は「片手仲介」を採用し「囲い込み」を行わないことを公式に宣言していることで有名な会社です。
実際に利用したユーザー満足度も非常に高い(92.9%)不動産会社なので、首都圏の物件売却をご検討の方は、まずは査定依頼してみるとよいでしょう。
売り止めの意味とは?
「売り止め」の読み方には2種類あります。ひとつは「売り止め(うりやめ)」、もうひとつは「売り止め(うりどめ)」です。
不動産業界ではそれぞれ異なる意味で使われていますので、ここではその違いについて確認していきます。
「売り止め(うりやめ)」とは?
まず、「売り止め(うりやめ)」とは、販売中の物件の売主がなんらかの事情で「売ることをストップする」ことです。
もともとは売るつもりだったけど、状況が変わったので「売却をやめた」と売主が判断したことになります。
売主には、
- 住み替えのために売却する
- 住宅ローンが支払えなくて売却する
- 相続のために売却する
など、必ず不動産を売却する理由があります。
ところが、
- 住み替えるが、元の家は賃貸にすることにした
- 転職が決まり、住宅ローンが払えるようになった
- 相続した家に子供が住むことになった
など、売主の事情や状況に変化が生じて売り止めになることがあるんです。
つまり、不動産ポータルサイトなどに掲載されていた物件情報が消えた時には、売却が決まった場合と売却が中止になった場合があるわけですね。
「売り止め(うりどめ)」とは?
いっぽう、「売り止め(うりどめ)」とは、販売している物件に買付証明書(購入申込書)が入って購入の意思表示がなされ、具体的な契約条件などを交渉するために一時販売を中断することをいいます。
ただし、売却物件としての不動産情報自体は発信し続けています。
多くの場合、このタイミングで他の不動産業者やエンドユーザーが物件について問い合せると、「商談中です」「契約予定です」と回答されるでしょう。
商談によっては、契約条件の折り合いがつかなかったり住宅ローン融資の承認が下りないことなどがあって、「売り止め」から再度「販売中」に戻される場合もあります。
<物件の販売状況の推移>
ちなみに、「売り止め」にはもうひとつの意味があります。
それは、「売主から売却を依頼された不動産業者が他の不動産業者へ物件を紹介させないために悪用する」ということです。この点については次章で説明します。
不動産業者による「売り止め」の悪用
不動産業者による「売り止め」の悪用について、詳しく説明していきます。
3つの媒介契約の違い
不動産業者に不動産の売却を依頼する場合、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類の契約形態の中からひとつを選んで契約します。
それぞれの契約の特徴や違いは下記の表のとおりです。
一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 | |
---|---|---|---|
契約期間 | 規定なし(ただし一般的には3カ月以内) | 3カ月以内 | 3カ月以内 |
レインズ登録義務 | 法律上の義務なし | 契約から7日以内 | 契約から5日以内 |
業務報告義務 | 法律上の義務なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
自己発見取引 | 可 | 可 | 不可 |
他の不動産業者へ重ねて依頼 | 可 | 不可 | 不可 |
ここで注目したいのは、レインズへの登録義務と他の不動産業者への重複依頼です。
不動産会社は、一般媒介契約の場合はレインズへの物件情報登録の義務はありません。いっぽう、専属専任媒介・専任媒介契約の場合、それぞれ5日以内・7日以内に物件情報を登録しなければなりません。
売り主は、専属専任媒介・専任媒介契約を締結した場合は、他の不動産業者に重ねて売却を依頼することができません。3ヶ月以内の契約期間は1社限定で売却活動を行うことになります。
参考 それぞれの媒介契約のメリットやデメリットに関しては、下記記事で詳しく解説しています。
「両手仲介」狙いの「囲い込み」
これらの点から、専属専任媒介・専任媒介契約では、いわゆる「囲い込み」のリスクが発生します。
売却を依頼された不動産業者が自社で買主を見つければ、買主からの仲介手数料も受領して、手数料収入を2倍にできます。これを「両手仲介」といいますが、両手仲介自体は違法ではありません。
しかし、両手仲介を狙うために、他の不動産業者に物件情報を意図的に流さなかったり、他の不動産業者からの問い合わせに応じなかったりすることを「囲い込み」といいます。
囲い込みは、売主に対する重大な背信行為ですが、不動産業界ではいまだにこのような行為が横行しているのが現実です。
参考 下記記事では、囲い込みの実態と売主にできる防止策を紹介しています。囲い込みの被害に遭わないよう、しっかりと知識を身につけて自己防衛してください。
この「囲い込み」を行うために悪用されるのが「売り止め」なんです。「売り止め(うりどめ)」も「売り止め(うりやめ)」も両方とも悪用されています。
「囲い込み」を目的とした「売り止め」の悪用
具体的には、専属専任媒介もしくは専任媒介契約を締結し、登録義務があるため物件情報をレインズに登録はします。
ところが、他の不動産業者からの問い合わせに対して「現在、商談中です」「この物件は契約予定です」と回答し、販売を一時中断させる「売り止め(うりどめ)」を悪用することがあります。
本当は購入検討客などいないにもかかわらず、勝手に他の不動産業者からの問い合わせを断ってしまうんです。
さらにひどいケースになると、レインズへの登録自体を行っていないケースもあります。
その他にも、物件情報をレインズへ登録はしますが、他の不動産業者からの問い合わせに対して「売主の都合により一時売却を見合わせている状況です」と嘘の回答をすることもあります。
「売り止め(うりやめ)」を悪用して、あくまでも自社で買主を見つけようとしているんです。
「囲い込み」が起きる原因
こうした悪しき慣習がなくならない原因としては、不動産業者の社員に対する給与体系が挙げられます。給与のうち歩合が占める割合が大きければ、仲介手数料を稼がなければ給与が増えません。
そうすると、売主の利益より自分の利益を優先するという発想になり、自分自身の判断で「囲い込み」や「売り止め」を行って、成績を上げようと考えてしまうのです。過剰なノルマなども原因となるケースもあるでしょう。
このように、不動産業者による「売り止め」の悪用によって「囲い込み」の可能性がある以上、不動産を売却する時には、信頼できる不動産業者を選ぶことがたいへん重要です。
参考 不動産業者選びは、不動産売却の成否を大きく左右します。下記記事では不動産業者の選び方のポイントを解説しています。不動産売却の際には、ぜひご確認ください。
売り止め行為の実態
不動産業者による「売り止め」の悪用について分かってくると、自分の売り物件が対象になってしまわないか不安ですよね。
売り止めは、「人気の物件」や「安くて良い物件」、「出たばかりの新鮮な物件」ほど悪用されます。
反対に「なかなか売れない物件」は、売り止めせずに他の不動産業者の助けを借りながら、何とかして成約させようと考えます。
ここでは、売り止めの実態について見ていきましょう。
「商談中」が一転して・・・
不動産業者Aは、昨日レインズに登録されたばかりの人気マンションの物件情報を見つけました。
なかなか売り物件が出ないマンションであり、A業者のもとにも2名の購入希望者がいたので、早速元付業者であるB業者に問い合わせの電話をしました。
しかし、電話を切った後も納得できなかったA業者がB業者のホームページを確認すると、もちろんその物件が掲載されていました。
そこで、A業者は一般客のふりをしてB業者に電話してみることにしました。
A業者がこの事実を売主に報告できれば売主も救われるのですが、不動産業界では他の不動産業者と媒介契約中の売主に直接接触することを「抜き行為」と呼び、タブー行為とされているため難しい面があるのです。
レインズの物件情報がすぐに削除された
不動産業者Cは、3日前にレインズに登録されたばかりの物件情報をあらためて見ようとしたのですが、すでに情報が削除されていました。
不動産業者Dが扱っている物件ということはわかっていたので、電話で確認してみると「売主さんの都合で売り止めになりました」との回答でした。
ところが、レインズの物件情報は削除されているにもかかわらず、D業者のホームページや不動産ポータルサイトを確認すると、物件情報は掲載されたままだったのです!
これは、いったんレインズに登録して登録証明書を売主に提示し、その後に物件情報を削除して他の不動産業者が見られないようにする・・・というケースでしょう。
あくまでも、自社で買主を見つけて両手仲介を狙うといった悪質な売り止めです。
売り止めを防ぐ方法
このように、悪質な不動産業者に売却を依頼すると、売り止めをされてしまう可能性があります。物件をレインズに登録しなかったり、他の不動産業者の問い合わせに嘘を言ったりするだけで、売り止めは簡単にできてしまいます。
では、どうしたら売り止めを防ぐことができるのでしょうか?
有効な売り止め対策としてはこのようなものがあります。
- 売主自身が売り止めを知っていることをアピール
- レインズのステータス管理をチェック
- 他の不動産業者に確認してもらう
- 一般媒介で契約する
ここから、それぞれについて詳しく解説していきます。「自分の物件は自分で守る!」ためにも、売り止め対策について、しっかり確認しておいてください。
売主自身が売り止めを知っていることをアピール
まずは、売主として売り止めの事実があることや売り止めの実態について、理解しておくことが大切です。そして、媒介契約締結前の不動産業者との面談時に、売り止めや囲い込みについての知識があることをアピールしましょう。
不動産業者は「このお客さんは業界や取引について勉強しているな」と感じ、悪質な不動産業者に対してはそれだけで抑止力となります。
また、実際に「御社は囲い込みや売り止めはしませんよね?」と確認してもよいでしょう。
できれば明るい感じで聞き、相手の不動産業者が「しません」と答えてくれればOKですし、不機嫌な態度を取るようでしたら媒介契約締結を見送ってもかまいません。
「私は、不動産売却について一応の知識は持っていますよ」という事実とアピールが自分の物件を守ることにつながります。
レインズのステータス管理をチェック
物件の囲い込みや売り止めが後を絶たないことから、平成28年1月レインズを運営する不動産流通機構は、レインズに「ステータス管理機能」を追加しました。
「ステータス管理機能」には、「物件の取引状況を明示する機能」と「物件情報と取引状況を売主が直接確認できる機能」があります。
専任媒介もしくは専属専任媒介契約を締結した場合、不動産業者は取引状況として「公開中」「書面による購入申込あり」「売主都合で一時紹介停止中」のいずれかを設定することが義務付けられています。
「公開中」のステータスであれば、他の不動産業者からの問い合わせや引合いに対して、拒否することはできません。
<レインズの「ステータス管理機能」画面>
また、この取引状況を売主が直接確認できる機能も付けられました。
売主は専任媒介もしくは専属専任媒介契約を締結した不動産業者から、まずレインズの登録証明書を受領します。
その登録証明書には、専用確認画面URL・個別ID・パスワードが記載されていますので、それらを利用して、物件情報やマイソク図面、取引状況などを確認することができます。
このような仕組みによって、物件情報の囲い込みや売り止めをすることが不可能になる・・・と期待されています。
専任媒介もしくは専属専任媒介契約を結ぶ場合は、必ずレインズ登録証明書を受領し、不動産業者の義務である業務報告に合わせて定期的にステータスを確認しましょう。
他の不動産業者に確認してもらう
この対策は他の不動産業者の協力が必要となりますが、囲い込みや売り止めの事実を知るためには非常に有効な手段です。
方法はシンプルで、他の不動産業者に物件の確認をしてもらうんです。
取引状況のステータスが「公開中」なのに、「契約予定です」「売り止め(うりやめ)中です」という回答なら、囲い込みや売り止めをしていることになります。
その不動産業者との媒介契約は解約した方がよいでしょう。
なお、他の不動産業者に物件確認をお願いする際には、「囲い込みや売り止めが発覚した場合は御社と媒介契約を締結する」という条件を提示して協力してもらうとよいでしょう。
一般媒介で契約する
一般媒介契約なら、100%囲い込みや売り止めを防ぐことができます。
囲い込みや売り止めができるのは、物件を一社だけで独占できる専任媒介もしくは専属専任媒介契約を結んだときだけだからです。
一般媒介であれば、売主は他の不動産業者とも媒介契約を締結できるので、物件を独占できません。
一般媒介で複数の不動産業者と物件情報を共有しているのに、囲い込みや売り止めをすれば成約の可能性を低くするだけなので、なんのメリットもないでしょう。
したがって、複数の不動産業者と一般媒介契約を締結すれば、ほぼ間違いなく囲い込みや売り止めを防ぐことができるはずです。
ただし、一般媒介の場合、「自社で必ず成約できるかがわからないため、不動産業者が広告費をかけた売却活動をしにくい」というデメリットもあります。
参考 3つの媒介契約の違いと選び方に関しては、下記記事で詳しく解説しています。
SRE不動産は「片手仲介」を採用し「囲い込み」を行わないことを公式に宣言していることで有名な会社です。
実際に利用したユーザー満足度も非常に高い(92.9%)不動産会社なので、首都圏の物件売却をご検討の方は、まずは査定依頼してみるとよいでしょう。
また、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県のマンション売却をお考えなら、RENOSY スマート売却 も選択肢に入れておきましょう。透明性の高い売却活動で、囲い込みをしない不動産売却サービスです。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
売り止めや囲い込みの先には値下げがあるだけです
売り止めや囲い込みは、不動産業者にとっては利益がありますが、売主にとってはなんの利益もないどころか、売却の機会損失でしかありません。
悪質な売り止めの先に待っているのは、売却価格の値下げだけです。
囲い込みを行う不動産業者は、自社の利益を上げることしか考えていないので、必ず両手仲介がやりやすい価格に下げるよう提案してくるからです。
その結果、売主利益がさらに失われることになってしまいます。
売り止めを防ぐ方法ももちろん大事ですが、信頼できる不動産会社を選んで良い人間関係を築くようにするとよいでしょう。
以上、読み方によって違う「売り止め」の意味とは?両手狙いの売り止めに要注意!…でした。
参考 囲い込みの実態をもっと詳しく知りたい…という方は下記記事も参考に。不動産業者による囲い込みの手口や、売主ができる囲い込みの防止対策などを解説しています。
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