不動産を売却するにあたっては、業者による仲介で売ることが一般的ですが、最近は不動産買取業者の増加により、買取で売却する人も増えています。
しかしながら、不当な価格で買い叩かれるなどの失敗事例も少なくありません。
この記事では、不動産買取のメリット・デメリットやトラブル事例などを解説します。
不動産を売却予定の方は、ぜひご自身で買取と仲介の違いを理解して、失敗しないようにしましょう。
不動産買取を依頼する前に、ぜひご一読ください。
不動産の買取と仲介の違い
不動産を売却するためには、仲介で売却する方法と買取で売却する方法があります。まずは、それぞれの違いについて説明します。
仲介で売却する方法
不動産を仲介で売却する場合のフローに沿って説明します。
不動産仲介業者に査定を依頼する
不動産を売却する時には、いくらくらいで売却できるのかを知るために、不動産業者へ査定を依頼します。
1社だけでは査定価格の妥当性が判断できないため、できれば複数の不動産仲介業者へ依頼しましょう。この時、不動産査定一括サイトを利用すれば、一度に複数の業者から査定結果を受け取れますので、ぜひ活用しましょう。
媒介契約の締結
査定を受けとり、不動産仲介業者の提案(売却戦略や価格戦略など)に納得できれば、その不動産業者に売却を依頼するために媒介契約を締結します。
下記記事では不動産業者の選び方のポイントを解説しています。不動産売却の際には、ぜひご確認ください。
売却活動開始
媒介契約を締結した不動産仲介業者は、物件売却のために主にエンドユーザーである個人客を対象に売却活動を行い、購入希望者を探します。
売却活動の内容は、
- 物件情報をレインズや不動産ポータルサイトなどに登録して情報を発信する
- 店頭に物件情報を掲示して来店客に提案する
- 既存の見込客に物件情報を紹介する
- オープンルームを開催したり、現地看板などを設置したりする
- 近隣の各住戸にポスティングを行う
- 必要に応じて新聞チラシやDMなどの媒体を利用して情報の周知徹底を図る
- 他の不動産仲介業者にも広告活動をしてもらう
などがあり、情報の周知徹底を図ることで広く購入希望者を探していきます。
購入申込みおよび売買契約締結
そして、購入希望者が現れれば、不動産仲介業者は現地内覧の立会いや契約条件の折衝、価格の交渉などを行い、売買契約締結へと進んでいきます。
決済引渡し
契約締結後は、金融機関や司法書士とのやり取りや、引渡し書類の確認など、決済引渡しに向けて最終準備をサポートしてくれます。
不動産仲介業者のこういった売却サポートにより、不動産の売却が安全・確実に進められることとなります。
不動産売却の一連の流れを確認しておきたい…という方は下記記事も参考に。相場価格の調べ方から不動産会社選び、売却活動、契約、物件引き渡しまで、全体の流れを一通り解説しています。
買取で売却する方法
一方、不動産を買取により売却する場合はどうでしょうか。
こちらもフローに沿って説明します。
不動産買取業者に査定を依頼する
不動産を買い取ってもらう時、買取価格がどのくらいなのかを不動産買取業者へ査定してもらいます。
この場合も必ず複数の不動産買取業者へ依頼して、妥当性を検証しましょう。
買取の場合も、不動産一括査定サイトが利用できますので、ぜひ活用してください。
買取価格の提示
不動産買取業者から買取価格が提示されます。
あわせて買取の諸条件などを精査します。
売買契約締結
買取価格や契約条件について合意できれば、売買契約を締結します。
決済引渡し
契約締結後は、金融機関への確認や引渡し書類の確認など行い、決済引渡しとなります。
仲介の場合のフローと買取の場合の一番大きな違いは、「売却活動」の期間がないことです。不動産を仲介で売却する場合、購入希望者を探すために通常1ヶ月~3ヶ月程度の時間がかかります。
しかし、買取の場合は、不動産買取業者という購入希望者がすでにいますので、探す時間は必要ありません。
つまり、買取は仲介に比べて、売却(現金化)までの時間が圧倒的に短いことが最大の特徴です。
不動産買取のメリットとデメリット
仲介と買取の違いが理解できたところで、次は買取のメリットとデメリットについて説明します。
不動産買取の6つのメリット
まず、不動産業者による買取の6つのメリットには、このようなものがあります。
- 他人に知られずに売却できる
- 早く現金化できる
- 売主の瑕疵担保責任が免責される
- 仲介手数料を支払わなくてよい
- 資金計画を明確に立てられる
- 難あり・訳ありの不動産でも売却できる
それぞれについて、以下に詳しく解説します。
他人に知られずに売却できる
不動産業者が買い取る場合は仲介を依頼する場合と違い、インターネットやチラシなどの広告活動を通して、物件情報をマーケットに発信することや、オープンルーム開催や現地看板設置、内覧などを行う必要はありません。
そのため、売却することを近隣の人を含めた他人に知られずに行うことができます。
早く現金化できる
先に説明した通り、買取の場合は仲介の場合と比較して、はるかに早く売却することができます。
仲介で売却する場合は、通常1ヶ月~3ヶ月程度の売却期間を要しますが、買取の場合は、早ければ数日~数週間、遅くとも1ヶ月程度で売却が完了します。
売主の瑕疵担保責任が免責される
仲介で売却する場合、買主はエンドユーザーである個人客になるため、売主は買主に対して瑕疵担保責任を負うことが通常です。
瑕疵とは「欠陥」を意味し、売主は物件の雨漏りやシロアリ被害、給排水管の故障などについて一定期間(一般的に2~3ヶ月程度)修復などの義務を負うことになります。
しかし、買主が不動産業者の場合は、不動産取引のプロであるため保護をする必要がなく、瑕疵担保責任を免責(瑕疵担保責任を負わない)とする契約が一般的です。
仲介手数料を支払わなくてよい
不動産業者による買取の場合は、売主と買主の間に不動産仲介業者が存在しておらず、不動産買取業者との直接取引となるため、仲介手数料は発生しません。
資金計画を明確に立てられる
仲介で売却する場合、購入希望者により指値(価格を指定する)が入ったり、購入希望者が現れない場合は価格改定(値下げ)を行ったり、最終的な売却価格は確定しません。
しかし、不動産業者による買取の場合は、査定価格が最終的な売却価格ということになりますので、資金計画を立てやすくなります。
また、エンドユーザーに売却する場合、買主の住宅ローンが承認されない場合に契約を白紙とする、というローン特約が規定されますが、不動産業者による買取の場合はローン特約がありません。
難あり・訳ありの不動産でも売却できる
建ぺい率・容積率オーバーなどの既存不適格物件、再建築不可物件、築年数が非常に古い物件や旧耐震物件、心理的瑕疵のある事故物件などは、エンドユーザーから敬遠されがちです。
そんな難あり・訳あり物件でも、不動産業者による買取であれば売却が可能です。
再建築不可物件は、たいへん売却の難しい不動産です。ただ、まったく売る方法がないわけでありません。売却を検討中の方は、下記記事もご確認ください。
不動産買取の2つのデメリット
次に、不動産業者による買取のデメリットはこのように2つあります。
- 価格が安くなる
- 業者によって買取価格がバラつく
それぞれについて、以下に詳しく解説します。
価格が安くなる
基本的に、買取価格は相場価格の60%~70%程度になります。
売れ残りのリスクがあるような物件では、相場価格の50%ということもあります。
不動産買取業者は、仕入れた物件にリフォームやリノベーションなどの付加価値を加えて、再販します。
そのため、再販時に販売できると査定した価格から、リフォーム費用、税金などの諸経費、広告宣伝費、粗利益などを差し引いて買取価格を算定するのです。
したがって、買取価格は相場価格より低い価格となります。
業者によって買取価格がバラつく
買取価格は、不動産買取業者によってバラつきが出ます。
どの程度の利益を計上するのか、広告宣伝にどの程度費用をかけるのか、再販価格はいくらが妥当なのかなど、不動産買取業者ごとに事情が変わってくるからです。
「どうしても早めに仕入れて今期の売上にしたい」という事情があれば、ある程度高額でも買い取ってくれるでしょう(こういった状況を業界内では「ハラペコ」といいます)。
反対に、これ以上売上を伸ばす必要のないお腹いっぱいの状況であれば、無理をして仕入れないため、低価格になる可能性もあります。
こういった不動産買取業者の事情により、買取価格が左右されることもあるので、買取査定は必ず複数の不動産買取業者から受けるようにしましょう。
不動産買取で注意したいトラブル
最後に、不動産買取におけるトラブル事例を紹介します。
- 物件の引渡条件によっては家財等の処分費用を請求されることも
- 押売りならぬ「押買い」的に、執拗に不当な安値で勧誘され続けた
- はじめから買取目的で媒介契約を結び、ろくな売却活動をせず安値で買い叩かれた
- 土壇場で値引きする、礼儀がなく下品な業者
それぞれについて、以下に詳しく解説します。このようなトラブルに巻き込まれないよう注意してください。
物件の引渡条件によっては家財等の処分費用を請求されることも
Tさん(50代・男性)は、父親の代から続くスーパー兼自宅を不況により売却することにしました。
土地面積が大きく古いスーパーも建っており、什器類もたくさんあるため、一般のエンドユーザーではなかなか買い手がつかないと考え、不動産買取業者へ相談しました。
すると、満足できる買取価格の提案を受けたので、売買契約を締結しました。
その後、決済引渡しの日を迎えましたが、その場でスーパーの什器類や業務用冷蔵庫、業務用エアコンなどの処分費用の請求を受けました。
契約書では現状有姿での引渡し、となっていましたが、特約事項で家庭用エアコンや照明、タンスなどの残置物の処分費は買主負担であるが、業務用の残置物は売主負担、と規定されていました。
ちなみに、業務用の残置物だったので、かなり高額な費用となってしまいました。
買取価格ばかりに気を取られ、諸条件をきちんと確認しなかったために起きたトラブルといえます。
押売りならぬ「押買い」的に、執拗に不当な安値で勧誘され続けた
ご主人を亡くし子供もいないNさん(70代・女性)は東京の自宅を処分して、いずれは姉のいる田舎へ引っ越そうと考えていました。
ご主人の四十九日が過ぎた頃、知らない不動産業者が家に訪ねてきて「この家をどうしても買いたい客がいる」と言いました。Nさんは「高く売れるなら話は聞いてみよう」と考え、その不動産業者に任せることにしました。
しかし、買いたいというお客とは不動産買取業者のことで、価格も相場価格の半額程度の価格でした。
Nさんはその条件では売却する気はなかったので断ったのですが、「現金で一括決済をしますから、いかがですか?」と、いくら断っても執拗に勧誘を受けたため、国民生活センターに相談することとなりました。
このような「押買い」的な執拗で強引な勧誘を受けた場合は、決して売却せずに国民生活センターあるいはその不動産業者を管轄している自治体または国土交通省の担当窓口に相談しましょう。
はじめから買取目的で媒介契約を結び、ろくな売却活動をせず安値で買い叩かれた
自宅マンションを買い替えのため売却しようと考えたMさん(30代・男性)は、郵便ポストに入っていた「このマンション限定で探しているお客様がいます」というチラシの不動産業者に相談してみました。
その不動産業者の話は具体的だと感じ、早く売りたいので、すぐに媒介契約を締結しました。しかし、一向に話は進展せず「他にも買いたい人がいますから」と言われ、ズルズルと日が過ぎていきました。
そのうちに買い替えのタイミングが迫ってきてしまい困っていたところに、「当社で買い取りましょうか」という申し入れがありました。
買取価格は、なんと査定価格の半額でした。
その不動産業者は、購入希望者がいると見せかけて、ほとんど売却活動をせずに売らなければ 困るタイミングを待ち、安い価格で買い取りを提案する悪徳業者だったのです。
「このマンションを買いたいお客様がいます」といった「求むチラシ」は、ほとんどがおとり広告の一種ですので、連絡を取ることは止めましょう。
連絡をすればこの事例のように、「この人は早く売りたいのだな・・・」と足元を見られ安く買い叩かれてしまう可能性があります。
買い替えは一連の流れを理解し、タイミングを間違えないことが重要です。下記記事では、不動産の買い替えを失敗しないためのポイントを解説しています。
土壇場で値引きする、礼儀がなく下品な業者
Uさんは投資用マンションが空室となったため、売却しようと不動産買取業者へ相談しました。
希望売却価格2,000万円のところ、買取価格が1,500万円だったため、何度となく交渉を重ね、売買価格1,750万円で買付証明書(購入申込書のことです)をもらい、契約を待つこととなりました。
しかし、売買契約の前日の夕方、「やはり1,700万円で契約してもらえませんか」という相談がその不動産買取業者からあったため、Uさんはきっぱりと断り、契約を白紙撤回としました。
Uさんは、価格交渉を経て決定した売買価格を、契約日前日に値下げしてくる礼を失した企業姿勢に疑問を持ち、「そんな不動産業者とは取引しない方がよい」と判断したのです。
悪徳業者はビジネスの常識を外した振る舞いや行為をします。
そのため「おかしいな」と感じたら、その後のことを考え、取引は中止する方が賢明です。
不動産買取に失敗しないために
不動産買取は、現金化までの時間を非常に短縮できるスキームです。
満足できる間違いのない不動産買取であれば有効なのですが、現金化を急ぐあまりに落とし穴に入ってしまうリスクもあります。
やたら急がせる不動産買取業者、あまり詳しい説明をしない不動産買取業者、こちらの聞いたことに満足に答えない不動産買取業者など、「信用できないな」と感じたら取引を中止する覚悟も必要です。
そして、事前の準備をきちんと行い、不動産一括査定サイトなどを利用して必ず複数の不動産買取業者の提案を比較するようにしましょう。
人生において不動産を買い取ってもらうことは、何度もあることではありません。
失敗のない不動産買取ができるよう、信頼できる不動産買取業者を選ぶことが大切です。
以上、不動産買取の6つのメリットと2つのデメリット!注意したいトラブルも要チェック!… でした。
参考
複数の不動産業者を比較検討して、信頼できる業者と取引したい…という方は下記記事も参考に。一括査定サイトを使えば、複数の業者の中から、物件タイプにマッチした信頼できる業者が見つかる可能性も高くなりますよ。