「不動産を売却する際に、買取保証をつけるべきかどうか?」
あなたも一度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。
不動産を期限までに確実に現金化できる買取保証は、とくに家の買替を計画している人は検討の価値があります。
しかし、一見魅力的に思えますが、実はデメリットも存在します。
今回は、不動産売却における買取保証の仕組みや仲介との違い、利用した場合のメリット・デメリットなどについて、詳しく解説します。
期限付きの不動産売却や家の買替などを検討中の方は必見です!
不動産売却の買取保証とは?仲介や即時買取との違い
まず「買取保証」の概要や「仲介」などとの 違いなどについて説明します。
買取保証とは?
「買取保証」(不動産業者によっては「売却保証」ともいいます)とは、3ヶ月間~6ヶ月間の一定期間は仲介で売却活動を行い、期間中に売却できなかった場合、査定価格の90%を上限として不動産業者が買い取ってくれるシステムのことです。
「仲介」では「○月までに必ず売却できる」という保証はなく、常に流通マーケットや見込客の状況に影響を受けてしまいます。
また「即時買取」では「確実に売却できる」という安心感はありますが、「売却価格が安い」という難点があります。
<買取保証の仕組み>
一定期間とはいえ、自分で納得できる価格で売却活動を行い、最悪の場合は買取により売却を確定させる・・・
「買取保証」とは、不動産業者が売主と媒介契約を締結して行う「仲介業務」と、不動産業者が査定をしてすぐに買い取る「即時買取」の両方の長所を取り入れた仕組みといえます。
また、とくに買替の場合、資金計画の確定や売却できないリスクを解消できることから、その強みを発揮します。
仲介や即時買取との違い
それでは、買取保証と仲介や即時買取との違いはどのような点なのでしょうか。
一覧表で確認してみましょう。
仲介 | 即時買取 | 買取保証 | |
---|---|---|---|
買い手 | マイホームなどを探しているエンドユーザー | 不動産業者 | エンドユーザーか不動産業者 |
売却価格 | 相場価格 | 相場価格の70%~80% | 査定価格の90%以内 |
売却までの期間 | 未定 | 即 | 3ヶ月~6ヶ月 |
仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円が上限(別途諸費税 ) | なし | 仲介期間に売却した 場合は既定手数料あり |
情報の公開 | あり | なし | 仲介期間はあり |
瑕疵担保責任 | あり | なし | 仲介期間に売却した 場合はあり |
適している物件の特性 | 通常の売却活動で成約できる引合いの強い物件 | 駅から遠いなどの難点や問題のある物件 | 買替などの場合で売却の期限が決まっている物件 |
査定から売却までの流れ
<査定から売却までの流れ>
上記の図のように、仲介と買取を比較すると、行う業務工数の違いが明らかです。
なぜなら、仲介の場合は物件情報を広く流通マーケットに周知させ、すみずみまで浸透させる必要があります。
しかし、買取の場合はあらかじめ買主が決まっているため、流通マーケットへの物件情報の周知を行う必要がなく、多くの時間や工数の省略が可能となります。
ただし、価格だけを考えるのであれば仲介の方が有利です。
時間や手間をかけて物件情報を発信するので、広く買い手を探すことができ、相場価格で売却できることとなります。
買取の場合は、相場価格の70%~80%程度が目安となります。
不動産は数千万円という価格になり、20%~30%の減額でも何百万円以上という額になるので、その差はけっして小さなものではありません 。
不動産買取を利用する際には、下記記事で解説しているようなメリットとデメリット、注意点などをよく理解しておきましょう。
大手不動産仲介業者による主な買取保証システムの概要
主な大手不動産仲介業者の買取保証システムの概要についてまとめましたので、確認しましょう。
東急リバブル | 三井のリハウス | 住友不動産販売 | |
---|---|---|---|
対象不動産 | 個人の居住用の土地・一戸建・マンション | ||
対象者 | 個人・法人(宅建業者除く) | 個人(宅建業者除く) | (記載なし) |
物件の基準 | 【土地・一戸建】 敷地面積40㎡以上 築30年以内(但し築年数に応じた制限あり) ※別途規定の建物検査あり 【マンション】 築30年以内 専有面積30㎡以上 | 【土地・一戸建】 敷地面積40㎡以上 ※別途規定の建物検査の場合あり 【マンション】 専有面積40㎡以上 1981年(昭和56年)6月1日以降の建築確認取得物件 | 【土地・一戸建】 敷地面積40㎡以上 ※別途規定の建物検査の場合あり 【マンション】 新耐震基準 専有面積40㎡以上 自主管理を除く |
保証期間 | 3ヶ月以上6ヶ月以内 | 3ヶ月 | |
保証金額 | 1億円以下かつ査定価格の90%以内 | ||
その他条件 | ・法令および条例に適合していること ・一般的な住宅ローンの通常利用が可能であること | ・一般的な住宅ローンの通常利用が可能であること | ・建築基準法等に適合し、一般的な住宅ローンが利用可能な物件であること |
販売計画 | あらかじめ提示した販売計画に基づき、売却を開始する | ||
その他 | 利益還元制度・立替払制度あり | 買替つなぎ融資あり |
特徴的なのは、販売計画です。
各社とも、売出し価格を最低価格の115%に設定し、売却状況を見ながら段階的に査定価格の105%、買取保証価格の105%と値下げし、それでも成約しない場合には査定価格の90%を上限とした買取価格で買い取ることとなります。
不動産売却における買取保証10のメリット
買取保証の内容がわかったところで、買取保証の10のメリットについて説明します。具体的なメリットとしては、このようなものがあります。
- 買替の資金計画を確定できる
- 売却から買替までのスケジュールを確定できる
- 売却の進捗状況に影響されずに買替を進められる
- 売れ残りの不安がない
- 利益還元制度を設定している不動産業者もあり
- 立替払制度やつなぎ融資制度により売却前でも新居へ入居できる
- 仲介期間で成約すれば、相場価格で売却できる
- 買取の場合、瑕疵担保責任が免除される
- 買取の場合、仲介手数料がかからない
- リフォームの必要がない
それぞれについて、以下に詳しく解説します。
買替の資金計画を確定できる
買替を計画している場合、金融機関への住宅ローン返済、購入する物件の手付金支払いや残金支払い、など現金を用意しなければいけないタイミングが決まっています。
買取保証を利用すれば、3ヶ月~6ヶ月後に不動産業者が現金一括で買い取ってくれるため、そうした資金計画を確定することができます。
一定期限内に必ず現金化できることのメリットは非常に大きいでしょう 。
売却から買替までのスケジュールを確定できる
買取保証を利用すると、あらかじめ売却の期限が決まっているので、スケジュールを確定させることができます。
「物件がなかなか売れずに買替や引越しなどのスケジュールが決められない」といった心配は無用です。
売却の進捗状況に影響されずに買替を進められる
仲介で売却を進めている場合は、売却の進捗状況に合わせて買替や引越しのスケジュールなどを見極めていくことになります。
しかし、買取保証では最終的な出口が決まっているので、売却の進捗状況に左右されることなく、買替や引越しの計画を進めることができます。
売れ残りの不安がない
買取保証では、最終的な売却の期限が決まっているため、「いつまでたっても売れない…」という売れ残りの不安がありません。
やきもきとした不安を抱えることがないので、売れ残って困るというストレスから解放されます。
利益還元制度を設定している不動産業者もあり
前述の大手不動産業者である東急リバブルでは、買取保証を利用した場合に、利益還元制度という制度を設定しています。
この制度は、再販売価格から買取保証価格および買取や再販売に必要な費用(登記費用・仲介手数料相当額など)を差し引いて利益が出た場合に、買取保証を利用した売主にその利益を還元してくれる、という制度です。
<利益還元制度の例>
立替払制度やつなぎ融資制度により売却前でも新居へ入居できる
買取保証を利用した場合、東急リバブルでは立替払制度、三井のリハウスでは買替つなぎ融資制度という制度があります。
名称は違いますが、いずれの制度も買取保証を利用した場合に、買替資金を立て替えてくれる、という制度です。
売却の決済前に、買替のために購入する新居の代金を支払う場合などに利用できます。これにより、売却前に新居への入居が可能となります。
仲介期間で成約すれば、相場価格で売却できる
あらかじめ決められた仲介での活動期間内に物件が成約すれば、そのまま相場価格で売却できることとなります。
通常、売出し価格は査定価格より高めに設定し、様子を見ながら価格を段階的に下げていくことになります。
そのため、早く売れれば高く売れるということになります。
<価格変更スケジュールのイメージ>
買取の場合、瑕疵担保責任が免除される
仲介により個人の買主へ売却した場合、売主は買主に対して引渡しから2ヶ月~3ヶ月間、瑕疵担保責任を負うこととなります。
瑕疵とはキズや欠陥を意味します。
つまり、売却した物件に不具合や欠陥があった場合、瑕疵担保責任期間内において、売主は修繕などの対応をしなければなりません。
しかし、不動産業者に売却した場合は、瑕疵担保責任は免責となります。
買取の場合、仲介手数料がかからない
不動産業者による買取の場合は、仲介手数料は不要となります。
3,000万円で売却する場合、仲介手数料の上限は3,000万円×3%+6万円と消費税ですので、約104万円となりますが、この費用を節約できることとなります。
不動産売却時の仲介手数料に関して、もっと詳しく知りたい…という方は下記記事も参考に。仲介手数料の上限の決め方や支払うタイミング、値引きなどについて解説しています。
リフォームの必要がない
仲介の場合は、室内の状況によってはリフォームを行う場合がありますが、買取の場合は、不動産業者が自社の販売戦略に沿ったリフォームを行うため、売却するためのリフォームを売主がする必要はありません。
不動産売却における買取保証6つのデメリット
続いて、買取保証の6つのデメリットについて説明します。具体的なデメリットとしては、このようなものがあります。
- 物件が不動産業者の基準に合致する必要あり
- 仲介期間中の価格変更に制限がある
- 専属専任・専任媒介契約の締結が条件なので3ヶ月は解約不可
- 売却価格が仲介より低くなる
- 仲介での売却活動がおざなりになるリスクも
- 売却期間が長引くほど売却価格が低くなる
それぞれについて、以下に詳しく解説します。
物件が不動産業者の基準に合致する必要あり
不動産業者が買取保証をする場合、物件の基準に合致する必要があります。
物件の基準とは、専有面積や築年数、遵法性などが重視されます。
多くの不動産業者が設定している物件の基準と理由は以下の通りですので、よく確認しましょう。
物件の基準 | おもな理由 |
---|---|
専有面積30平方メートル以上 | それ以下だと住宅ローンが適用できないため |
1981年(昭和56年)6月1日以降の建築確認取得物件 | 耐震基準を満たす新耐震基準であるため |
専有部内の状況 | あまりにも損耗が激しい場合は、買取ができないため |
物件のエリア | 人口が減少しているエリアや取引事例の少ないエリアなどは再販が難しいため |
法令および条例に適合していること | 違法建築では住宅ローンが適用できないため、 |
仲介期間中の価格変更に制限がある
買取保証の場合、価格変更については、前記の図<価格変更スケジュールのイメージ>のようにあらかじめ定められており、変更することができません。
事前の提案などでよく確認しましょう。
不動産をできるだけ高く売却するには、事前に周到な価格戦略を立てておくことです。下記記事では、適切な相場の見極めや、効果的な値下げ幅、値下げのタイミングなど、より具体的な価格戦略を解説しています。
専属専任・専任媒介契約の締結が条件なので3ヶ月は解約不可
買取保証の場合、媒介契約は専属専任契約もしくは専任契約を締結します。そのため、何か不満があって解約したくとも3ヶ月間は解約できません。また、他の不動産業者に重ねて売却を依頼することもできませんので注意しましょう。
事前の提案や価格戦略などをよく確認することが大切です。
売却価格が仲介より低くなる
不動産業者による買取の場合、買取価格は、一般的に相場価格の70%~80%です。
買取保証の場合は、査定価格の90%を上限としているケースが多く見られます。
買取保証の場合は、再販を想定しなければならないので、仲介の場合より保守的な査定価格となり、査定価格が安くなる傾向があります。
仲介での売却活動がおざなりになるリスクも
買取保証の場合、不動産業者によっては 仲介期間での売却活動がおざなりになるリスクがあります。無理に高値で売らなくても、最終的には 取り決めてある価格で買い取ることになっているためです。
ケースによっては、あらかじめ相場価格の50%~60%程度の買取価格で取り決めておいて、仲介で成約することなく、再販売による転売利益を狙っている悪質なケースもありますので、注意が必要です。
売却期間が長引くほど売却価格が低くなる
買取保証の場合は、あらかじめ価格変更の金額とスケジュールが決められます。
そのため、売却期間が長引くと自動的に売却価格がどんどん低くなります。
いずれにしても査定価格をもとにパーセンテージで決められるので、後悔のないような査定価格を算定してもらいましょう。
不動産売却で買取保証をつけるべきケースとやめるべきケース
買取保証の特性を活かして買取保証をつけるべきケースと、やめるべきケースがあります。それぞれ具体的な例で確認してみましょう。
買取保証をつけるべきケース
転勤なので予定期日までに確実に売却したい
転勤により引越しのスケジュールが確定している場合は、買取保証を利用して仲介と買取の両面で、計画的に売却活動を進めた方がよいでしょう。
転勤が迫っていて決められた期間内に売却したい場合など、最終的な出口が決まっているので安心です。
買替などで期日までに資金が必要
買替などにより、新しく物件を購入するために確実に売りたい、決まった期日までに現金化したいなど、スケジュールや資金の事情がある場合は、買取保証を利用することがよいでしょう。
不動産業者によっては、つなぎ融資や資金立替などの制度もあります。
買取保証をやめるべきケース
人気エリアにあり、なかなか売却物件が出ないケースや、売却物件が出ればすぐに売れてしまう人気マンションなど、引く手あまたの人気物件の場合は、買取保証はやめるべきです。
通常の仲介で、最大限高く早く売却した方が賢明です。
買取保証をつけるなら複数の不動産業者で価格比較を!
不動産の買取と聞くと、買い叩かれるイメージを持つ方が少なくありません。
たしかに以前は、不動産業者であるプロとエンドユーザーであるアマチュアの情報格差を利用して、不当に安い価格で買い取ったり、密談により買い取ってしまったり・・・というケースが多くありました。
しかし最近は、インターネットの発達によりクリーンな取引が可能となりました。
たとえば、不動産一括査定サイトの登場です。物件情報や個人情報を入力するだけで、複数の不動産業者の査定を受けることができます。同時に、査定価格や買取価格の決定のプロセスや根拠、売却戦略などの提案を受けることもできるのです。
買取保証を検討する場合には、ぜひ不動産一括査定サイトを活用して、複数の不動産業者の査定価格や売却戦略を比較検討して、後悔のない売却活動を進めましょう。
不動産売却の買取保証はデメリットやリスクをよく理解しておきましょう
仲介と即時買取の長所を掛け合わせたような買取保証ですが、もちろんデメリットやリスクもあるので、よく理解しておきましょう。
価格面など妥協できない場合は、遠慮なく突っ込んで質問や確認を行うべきです。
そのうえで、期限までに必ず売りたいケースや買替のために資金計画を確定させたいケースなどの場合は、期限までに確実に現金化できる買取保証システムを利用することをお勧めします。
その際は、不動産一括査定サイトを利用して、複数の不動産業者から査定を受けることで、競争原理を働かせてください。
実力があり信頼のおける、優良なパートナーになる不動産業者を選ぶことが最も大切です。
以上、不動産売却における買取保証とは?押さえておきたい10のメリットと6つのデメリット!…した。
参考
売りたい物件に最適な不動産一括査定サービスを知りたい…という方は下記記事も参考に。一括査定サイトにも、得意不得意な分野があります。物件タイプに合った査定サイトを使えば、ピッタリな業者が見つかる可能性も高くなりますよ。