既存住宅売買瑕疵保険とは?中古住宅(マンション・戸建て)売却における4つのメリット

不動産売却

平成22年から導入された「既存住宅売買瑕疵保険」ですが、まだまだ定着しているとはいえません。

理由はいろいろと考えられますが、「既存住宅売買瑕疵保険のメリットがピンとこない」というのも理由のひとつでしょう。

 
中古住宅を売却すると、引き渡し後に欠陥が発見されて修復が必要になったり、最悪の場合は契約解除や損害賠償請求にまで発展するリスクがあります。

このようなときに強い味方となってくれるのが、この既存住宅売買瑕疵保険なんです。

 
使い方次第では、売主にとって大きなメリットもありますが、一方ではいくつか注意点もあります。

そこで今回は、既存住宅売買瑕疵保険について、その仕組や保険料、メリットや注意点などを徹底解説します。中古住宅を売却する方は、ぜひ確認しておいてください。

瑕疵担保責任とは?

 

瑕疵担保責任の原則

個人間で中古住宅などの不動産を売買する場合、売主は買主に対して瑕疵担保責任を負います。

瑕疵担保責任とは、隠れた瑕疵(=キズ・不具合・欠陥)が発見された場合、売主は買主に対して修復するなどの責任があるということです。

隠れた瑕疵とは、買主が通常の注意を払っていても見つけることのできなかった欠陥をいいます。

 
住宅の場合は、雨漏りやシロアリ被害、給排水管の故障などが隠れた瑕疵にあたります。

売主が知っている欠陥については、事前に告知することで告知義務を果たすこととなり、買主も納得のうえ購入したといえますが、売主が知らなかった瑕疵が発見された場合は、瑕疵担保責任を果たさなければなりません。

 
民法では、買主が瑕疵の事実を知った日から1年以内は契約の解除又は損害賠償の請求ができるとされており、売主にとっては非常に厳しい規定となっています。

 

特約により2~3ヶ月間の責任期間にするのが一般的

ただし、瑕疵担保責任は任意規定のため売主・買主双方が納得すれば、特約事項などで別の取り決めをすることが可能です。

そのため、個人間の不動産売買においては、一般的に2~3ヶ月間の瑕疵担保責任の期間を設定します。状況によっては、瑕疵担保免責(売主が瑕疵担保責任をまったく負わない)こともありますが、買主が不動産業者などのプロの場合です。

個人の買主の場合は、「土地建物で売却したが、建物は築年数が古く解体前提のため、建物に対する瑕疵担保を免責とする」といったケースがあります。

 

対象範囲も限定されるのが一般的

そして、瑕疵担保責任の対象範囲についても限定されるのが一般的です。
主な対象範囲は、雨漏り・シロアリ被害・建物構造上主要な部位の腐蝕・給排水管の故障などとなります。

ちなみに、売主が不動産業者の場合は、宅地建物取引業法の規定により引渡し後2年間の瑕疵担保責任の期間を定めていることが多いです。

 
<個人間売買契約書の瑕疵担保責任条項の例>

 
瑕疵担保責任については、下記記事にて詳しく解説しています。

瑕疵担保責任とは?不動産売却における瑕疵担保責任の期間や免責、保険について分かりやすく解説
瑕疵担保責任は、不動産売却において売主が買主に対して、その不動産に瑕疵があった場合に負わなければならない責任のことです。瑕疵担保責任免責とは、不動産売買契約時に売主・買主双方が合意して「売主は買主に対して瑕疵担保責任を負わなくてよい」とすることです 。

 

既存住宅売買瑕疵保険とは?

 

既存住宅売買瑕疵保険制度が導入された背景

まず、この保険制度が国により導入された背景について説明します。

新築住宅においては「住宅の品質確保の促進に関する法律」(品確法)により、販売した売主または施工会社が、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分に対して、10年間の瑕疵担保責任を負わなければなりません。

それに対して、中古住宅の売主が個人の場合は前項で説明した通り、「瑕疵担保責任の期間が2~3ヶ月間程度と短く、瑕疵担保責任に対する不安が中古住宅流通の活性化に影響を与えているのではないか」と国が判断しました。

 
そこで平成22年より、「購入前に建物を検査機関が検査したうえで瑕疵保険に加入できる」という体制を整え、個人が安心して中古住宅の売買ができ、中古住宅流通マーケットが活性化することを期待して既存住宅売買瑕疵保険が登場しました。

POINT目的は中古住宅流通マーケットの活性化

 

既存住宅売買瑕疵保険のタイプ・保険料・保険内容など

 

売主が宅建業者と個人間売買の2種類

既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅の検査と保証がセットになった保険であり、売主が宅建業者のタイプと個人間売買タイプの2種類あります。

強制保険ではなく任意保険ですが、既存住宅売買瑕疵保険に加入していれば、売却した中古住宅に保険対象の瑕疵があった場合、保険金によって補修費用などがカバーされることになります

 

保険加入の費用・対象・期間

保険に加入するためには、保険料と現場検査手数料を支払う必要があります。
対象既存住宅の構造や床面積などにより費用は変わりますが、両方合わせておよそ8万~10万円程度です。

保証の対象となるのは、「構造耐力上主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」などで、保険期間は1年間、2年間、5年間など各保険法人によって違いますが、選択できるようになっています。

POINT保険の加入費用はおよそ8万~10万円程度

 

保険金の限度額・住宅の要件

保険金の限度額は500万~2,000万円程度ですが、住宅瑕疵担保責任保険法人によってバラつきがありますので、それぞれの保険法人に確認してください。

保険金の支払い対象となる費用には、補修費用の他に調査費用、転居・仮住まい費用なども含まれます。

また、保険に加入するための住宅の要件は、新耐震基準に適合した住宅であることなど一定の要件があり、すべての中古住宅が加入できるわけではありませんので注意が必要です。

POINT保険加入には、新耐震基準に適合した住宅であることなど一定の要件あり。

 

既存住宅売買瑕疵保険の仕組み

次に、既存住宅売買瑕疵保険の仕組みについて説明します。

売主が個人の場合の個人間売買タイプでは、保証を行う検査業者が保険に加入するというのが大きな特徴です。

 
<個人間売買タイプの既存住宅売買瑕疵保険の仕組み>

  1. 個人の売主が検査機関に対象住宅の検査と保証を依頼します。
  2. 検査機関から保険申込を受けた住宅瑕疵担保責任保険法人は、対象住宅の引渡し前に建築士による現場検査を行ったうえで保険の加入を引き受けます。
  3. 検査機関は独自に対象物件の検査を行います。
  4. 検査機関と保険法人による2段階の検査を受けることで、買主に対する保証が行われます。
  5. 最終的に問題がなければ、検査機関に保険証券が発行されます。

引渡し後に保険対象の瑕疵が見つかった場合、保険法人より検査機関へ瑕疵の補修費用などが保険金として支払われます。

万一、検査機関が倒産などにより瑕疵の補修などができない場合、保険金は買主へ直接支払われることになります。

 
また、「1.検査・保証依頼」は、買主が行うことも制度上認められており、保険加入費用をどちらが負担するのか、あらかじめ決めておくことがトラブルの発生を防ぎます。

保険加入費用は仲介業者が負担することも可能であり、実際に一部大手仲介業者は独自のサービスとして保証制度を取り入れています。

 

既存住宅売買瑕疵保険の4つのメリット

売主にとって既存住宅売買瑕疵保険に加入するメリットとしては、このようなものがあります。

  • 瑕疵担保責任のリスクから解放される
  • 物件の安全性が証明され差別化をアピールできる
  • 築古戸建てでも安心して売却できる
  • 買い手に税制上のメリットをアピールできる

それぞれについて、以下に詳しく解説します。

 

瑕疵担保責任のリスクから解放される

たとえ短期間といえども、売主の瑕疵担保責任を負っていれば、どのような瑕疵が発生するかわかりません。しかし、既存住宅売買瑕疵保険に加入していれば、そういったリスクから解放されます。

 

物件の安全性が証明され差別化をアピールできる

保険に加入するためには、検査機関と保険法人のダブルチェックを受ける必要があります。

そのため、保険加入が認められたということは、物件の安全性が立証されたこととなり、検査を受けていない他の中古物件との差別化をアピールできます。

 

築古戸建てでも安心して売却できる

建物の築年数が古ければ古いほど、瑕疵担保責任のリスクは増大し、そのリスクを売却価格に反映すれば価格は安くなってしまいます。

しかし、既存住宅売買瑕疵保険に加入していれば、築古物件でも瑕疵担保責任のリスクから解放され、高く売却することも可能となります。

 
古家付き土地の売却方法に関しては、下記記事にて詳しく解説しています。

古家付き土地(空き家)の3つの売却方法!それぞれのメリット・デメリットを徹底解説!
古家付き土地の売却にお悩みではありませんか?古家が建ったままか更地にしてから売却するべきか判断が難しいですよね。本記事では、古家付き土地の3つの売却方法と、それぞれのメリット・デメリットを解説します。古家付き土地の売却を検討中の方は必見です。

 

買い手に税制上のメリットをアピールできる

既存住宅売買瑕疵保険が付保された物件を購入すると、住宅ローン控除、住宅取得等資金の非課税制度、登録免許税の軽減、不動産取得税の軽減など、買い手に税制上の優遇措置を多数受けられるメリットがあります。

そのため、買い手に対して物件購入のアピールができ、成約率が高まります

 

既存住宅売買瑕疵保険の注意点

最後に、既存住宅売買瑕疵保険の注意点について説明します。火災保険や生命保険と違って、あまりなじみのない保険ですので、誤解や勘違いがないように注意が必要です。

具体的な注意点としては、このようなものがあります。

  • 申込みのタイミングが限られている
  • 検査不適合でも現場検査手数料は支払う
  • 追加工事が必要な場合がある
  • 既存住宅売買瑕疵保険は万能ではない

それぞれについて、以下に詳しく解説します。

 

申込みのタイミングが限られている

火災保険や生命保険はいつでも加入できますが、既存住宅売買瑕疵保険は所有権移転のタイミングでしか加入できず、所有権移転後に加入したくても付保することはできません

また、保険加入のためには検査や必要手続きなど一定の時間が必要です。たとえ所有権移転の前だからといって、1週間前に申し込んでも手続きが間に合いません。そのため、事前に保険加入に要する手続きや時間を確認しておきましょう。

 

検査不適合でも現場検査手数料は支払う

保険加入するためには、検査機関や保険法人の検査を受ける必要があり、保険料と現場検査手数料を支払わなければなりません。

万一、この検査に不適合という結果が出た場合でも、現場検査手数料は支払う必要がありますので、あらかじめ注意しておきましょう。

 

追加工事が必要な場合がある

旧耐震基準の物件は耐震補強工事が前提となり、追加工事の必要があります。

新耐震基準物件でも、増築工事や構造に関わるリフォーム工事などを行っている場合は、耐震診断をして、耐震基準を満たしていることを証明しなければなりません。その結果、耐震基準を満たしていなければ耐震補強工事が必要となります。

 

既存住宅売買瑕疵保険は万能ではない

すべての保険に言えることですが、保険は万能ではありません。
既存住宅売買瑕疵保険もどんな瑕疵でも補修ができるわけではなく、保険でカバーされない瑕疵も少なからずあります

あらかじめ保証内容について十分に理解し、納得したうえで加入しましょう。

 

既存住宅売買瑕疵保険に詳しい不動産業者を選んで上手に活用を!

既存住宅売買瑕疵保険は、買主にとって税制上のメリットなどが多いのですが、売主にとっても上手に活用すれば大きなメリットが生まれます。

ただし、売買取引の中で一定の時間を要するため、有効活用するためには不動産仲介業者の知識や経験が必要です。

 
既存住宅売買瑕疵保険の仕組みや制度、運用方法などを熟知し、活用スキルを持つ不動産仲介業者を選定することが重要となります。

そのためには、不動産仲介業者に事前に保険の活用事例や実績などについて確認するとよいでしょう。

あなたの不動産売却を万全のものにするためにも、既存住宅売買瑕疵保険の活用をぜひ検討してください。

以上、既存住宅売買瑕疵保険とは?中古住宅(マンション・戸建て)売却における4つのメリット…でした。

 
参考記事:

2020年の民法改正により、瑕疵担保責任に関する条項が大きく改正されます。詳しくは下記記事にて解説していますので、併せてご確認ください。

2020年の民法改正による不動産売買7つの変更点と注意するべき5つのこと
改正民法が2020年4月1日から施行されることはご存知ですか?実は不動産売買にも大きな影響があります。そこで、2020年の民法改正による不動産売買の7つの変更点と5つの注意点について詳しく解説します。不動産売買を検討中の方は必見です。

 

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