「土地信託とは、どのような仕組みなんだろう?」
「土地信託を勧められているんだが、なにかデメリットやリスクはないのだろうか?」
土地信託といっても、あまり馴染みがないので、どう判断したらよいのか迷いますよね。
そこで今回は、土地信託の仕組みやメリット・デメリットなどについて、分かりやすく解説します。
失敗する可能性はゼロではありませんが、人によっては大きなメリットのある仕組みです。この記事を読んで、土地信託の仕組みについて理解を深めておきましょう。
土地信託とは?
土地信託とは、簡単に言うと「自分の土地を使って利益を上げてもらう」ということです。
信託とは「誰かを信じて託す」という意味があるので、土地信託は自分の土地を利用して、自分に代わって信託銀行や信託会社に利益を上げてもらうという仕組みです。
土地信託の概要については、以下の点を理解しておきましょう。
- 誰が運用するか?
- 信託受益権とは?
信託銀行による運用が一般的
土地の信託先は、信託業の免許を受けた信託銀行・信託会社に頼むのが一般的です。知人や親族に「わたしの土地の活用をあなたに任せます」といえば、それも土地信託になりますが、当然ながらプロに依頼する方が安全です。
土地信託といっても、土地という不動産を運用するわけですから、あくまで投資の一種になります。そのため、必ずしも黒字になるとは限りません。
○○信託銀行のような会社がイメージしやすいと思いますが、そのような信託業をメインにしている会社が自分の土地を運用します。
土地信託の仕組みと信託受益権
土地所有者は、信託会社と信託契約を結び、信託会社に土地を提供します。そして、その信託会社が土地を運用して土地所有者に利益を還元しますが、その利益を信託受益権といいます。
この「信託受益権」がある点が、ほかの土地活用にはない土地信託ならではの特徴です。
信託受益権とは、土地の運用益から配当を受ける権利であり、土地信託は「土地の所有権」という権利を凍結する代わりに、受益権を得るというようなイメージです。
ただ、土地所有者は変わらないので、信託会社に土地の譲渡をするわけではなく、あくまで土地の「利用権」を与えるという仕組みになります。
土地信託のメリット
土地信託にはこのようなメリットがあります。以下、順に解説していきます。
- 面倒なことを信託会社に任せられるので簡単
- 借入がないので低リスクで運用できる
- 所有権を失うわけではない
- 節税効果があるケースも
- 受益権は相続可能
- 借主の権利に左右されづらい
- 土地を効率的に経営できる
面倒なことを信託会社に任せられるので簡単
土地活用をする場合、基本的には所有者が資金調達をしたり、不動産業者の選定をしたりします。たとえば、賃貸物件の運営をしたとして、賃貸管理業者に運営を託しても、最終的に決めるのは所有者です。
しかし、土地信託であれば、そのような面倒なことを信託会社に任せられます。
そのため、資金調達、物件の建築・運営などを信託会社に任せ、所有者自身は何もしなくても良いという点はメリットと言えるでしょう。また、これは不動産の知識がなくても土地活用できるということでもあります。
借入がないので低リスクで運用できる
上述したように、資金調達は信託会社が行うので、土地の所有者は借入をする必要はありません。仮に、アパート経営で6,000万円の借り入れを、年利2.8%、借入期間25年で行ったとしましょう。
この条件だと、以下の支払い額になります。
- 月々返済額:278,324円
- 総支払額:83,497,272円
もちろん、アパート経営をするのであればアパートからの賃貸収入があるので、その収入を返済に充てることが可能です。
とはいえ、上記のように利息が2,300万円以上かかる上に、空室時で賃料収入がなければ、手持ち資金をねん出しなければいけないかもしれません。
このように、借入をして土地活用をすると、どうしてもリスクが生じます。そのリスクを信託会社が負ってくれるという点は大きなメリットです。
アパート経営は土地信託と比べてハイリスクな土地活用といえるでしょう。↓の記事では、土地活用としてのアパート・マンション経営のメリットとデメリットを、詳しく解説しています。
所有権を失うわけではない
上述したように、土地信託は「自分の土地を使って利益を上げてもらう」ということなので、信託会社に自分の土地を譲渡するわけではありません。
そのため、信託期間が満了すれば土地は返還されますし、土地に建物や設備を建築していれば、そのままの状態で返還されます。
もちろん、大規模な建物を建築するなど、信託会社が多額の借り入れをして建築した場合には、信託期間が長くなりますが、それでも建築物がそのままの状態で返還されるのはメリットです。
所有権が自分に返還された後は、その建物で賃貸経営をしても良いですし、建物ごと土地を売却しても構いません。
節税効果があるケースも
土地信託をすると、全てのケースではありませんが、以下の税金が節税できます。
- 印紙税
- 相続税
- 固定資産税
印紙税とは、商取引に関する文書に課税される税金です。仮に、土地を「売却する」選択をした場合には、売買契約書には印紙税がかかります。ただ、土地信託の場合には売却するわけではないので、この印紙税がかからないというわけです。
ほかの相続税・固定資産税については、土地に賃貸住宅を建築した場合に節税効果があります。賃貸住宅などの建築物があれば、土地の固定資産税は軽減されますし、相続税評価額も下がるからです。
参考 固定資産税の計算方法や特例に関しては、こちらの記事が詳しいです。
受益権は相続可能
土地信託をして得る「信託受益権」も、土地の所有権や賃借権などにように相続することができます。信託受益権の相続は、土地の所有権を相続するよりも遥かに簡単です。逆に、土地の所有権を相続するのは非常に面倒です。
所有権を相続するときは、相続登記という「名義変更」を行うのも面倒ですが、土地をどのように相続するかも面倒です。たとえば、相続人同士で所有権を共有すれば、その土地を売却するときなどは所有者全員の許可が必要になります。
一方、信託受益権の相続には、そのような面倒なことがないため、相続時もトラブル・手間が少なくなる点もメリットと言えます。
借主の権利に左右されづらい
たとえば、土地信託ではなく、自分でアパート経営をすると仮定します。その場合、当然ながら賃借人と賃貸借契約を結ぶ必要があり、その賃貸借契約は基本的に借主に有利な契約になっているのです。
というのも、賃貸借契約は借地借家法をベースにしていて、その借地借家法は借主保護の観点が強いです。
たとえば、オーナーが賃借人を退去させたくても、「賃料の未払い」などの妥当性のある理由がないと、退去させるのは非常に難しいです。
オーナーが退去させらないことよりも、借主の住む家がなくなってしまうことの方がリスクは大きいので、借主保護をしています。
賃貸経営において入居者を退去させるのは非常に難しく、立ち退き料などのコストを負担しなければならないケースが少なくありません。詳しくは↓の記事をご確認ください。
いっぽう、土地信託で発生する信託受益権は、自ら賃借人と契約するわけではないので借主の権利や意思に左右されにくいです。
土地を効率的に経営できる
信託先である信託銀行や信託会社は、数多くの実績があり、土地活用に関してのプロ集団と言えます。仮に、自ら土地活用をすると、賃貸業者などの力を借りることはできますが、自分の知見やノウハウも収益に反映しやすいです。
そのため、土地活用のプロに任せる方が安全と言えるので、実現性・計画性の高い土地活用をしてくれるという点はメリットになります。
土地信託のデメリットとリスク
土地信託には上述したようなメリットがある一方、このようなデメリットもあります。
- 条件が限られる
- 費用として信託手数料がかかる
- 自分で運用するよりも収益性は低い
- 信託期間中は売却不可
- 所得税の節税効果はほぼない
- 受託者に全てを任せるが失敗する可能性もある
- 土地活用のノウハウが身につかない
条件が限られる
土地信託の契約は、信託銀行や信託会社などが、信託契約を結ぶことに関して合意をする必要があります。
土地を託される側の信託会社も、その土地を利用して収益を上げなければいけないので、土地の収益性や資産価値はきちんと精査してから信託契約を結ぶかどうかを決めるというわけです。
信託会社は運用のプロなので、「その不動産から収益を上げられるか?」という点は非常に厳しい目で見ます。
たとえば、「アパートを建築して賃借人を付けられるか?」「一部を駐車場にしてニーズはあるか?」など、土地活用を色々なパターンで考え、収支計算をするのです。
そうなると、立地が悪いと土地や、形状が悪い土地など、収益性が低いと判断された土地は、信託契約を結べない可能性があるのです。つまり、土地の条件によっては信託契約を結べない可能性があるという点が土地信託のデメリットになります。
費用として信託手数料がかかる
土地信託は、信託会社に支払う手数料(信託報酬)がかかる点もデメリットと言えるでしょう。手数料は信託会社によって異なりますが、5%~20%ほどと幅広く設定されています。
また、手数料が高いからといって優秀な信託会社かどうか分からないので、信託会社の選定が難しいといった問題もあります。
自分で運用するよりも収益性は低い
土地信託は上述したような信託手数料がかかります。そのため、土地所有者の「支出」が増えてしまうぶん収益が下がるということです。
仮に、自分でアパート経営をすれば、賃貸管理業者に支払う手数料はありますが、信託会社に支払う手数料よりも安価なことが多いです。
自ら運用するときの「リスク」を覚悟すれば、自分で土地活用した方が収益を上げられることもあるのです。
信託期間中は売却不可
土地信託は信託契約を結び、その契約の中で信託期間を設定します。その信託契約期間中は、所有者の意思で土地を売却することはできません。また、土地信託は、その土地に建物を建築して収益を上げることが多いです。
つまり、10年スパンの長期で収益を上げることが多いので、自ずと信託契約期間も長くなりがちということです。
たとえば、まとまったお金が必要になり土地の売却を検討しているときなどに、土地信託の場合は売却できないのでデメリットに感じるでしょう。
所得税の節税効果はほぼない
仮に、自らアパート経営をすれば、以下のようなお金が経費として計上できます。
- 借入利息
- ローン関係費用
- メンテナンス費用
- 減価償却
借入利息は、ローンの借り入れをして返済するときに含まれる利息です。ローン関係費用とは、ローンを組む時に支払う保証料や手数料などです。メンテナンス費用は、建物を建築した場合に発生する、補修費用や管理費用などになります。
そして、不動産を自ら経営すると、その不動産を購入したお金を毎年「減価償却費用」として、経費計上することができるのです。これらの費用を経費として計上できれば、その土地から得た収益から差し引くことができます。
つまり、確定申告上は所得を下げることができるので、所得税の節税につながるというわけです。不動産の場合は特に減価償却費が高額なので、所得税の節税効果は高いといえるでしょう。
土地信託の場合は、その経費計上ができないので、その点もデメリットと言えます。
受託者に全てを任せるが失敗する可能性もある
上述したように、信託銀行や信託会社は土地活用のプロではありますが、やはりピンキリであるというのも事実です。
土地信託をすると、受託者に全てを任せることになるので、収益を上げられるかどうかは全て受託者にかかっているということです。
そのため、成功すればリスクが小さく収益を得られるのですが、土地活用や運用に失敗すれば、得るものがなくなります。その上、「収益を上げるため」という名目で、追加の投資を促されることもあります。
土地信託は元本保証というわけではないので、その点は良く理解した上で選択しましょう。
土地活用のノウハウが身につかない
土地信託は土地活用を全て任せるので、自らの知見にならず、土地活用のノウハウが身に付きません。仮に、自ら土地活用を検討するのであれば、そもそも土地活用はどのような方法があるのか?という点から調べます。
そして、活用方法が決まれば、運営会社や管理会社を選定したり、市場調査をしたりと、土地活用に関する色々なことを自ら行うでしょう。そうすれば、自分自身の知見となり、土地活用のノウハウが蓄積され、将来的な投資に役立ちます。
土地信託は、そのようなノウハウが身に付きません。言い換えると、土地信託する場合でも、全てを信託会社に任せきりにせず、自分でもノウハウを蓄積するために調査・勉強した方が良いでしょう。
ローリスク・ローリターンな土地信託
土地信託には、上述したようなメリット・デメリットがあります。最も大きなメリットは、信託会社という運営のプロに全てを任せることができ、比較的安定して収益を得られるという点でしょう。
一方、最も大きなデメリットは、信託会社に支払う手数料があるので、自分で運営するよりも収益が下がる可能性がある点です。
大ざっぱに見ると、土地信託はローリスク・ローリターンな土地活用といえます。
以上のようなメリット、デメリットを考慮した上で、土地信託をするのか、売却するのか、自ら土地活用として運用するのかを判断しましょう 。
以上、土地信託とは?7つのメリットと7つのデメリット&リスクを解説…でした。
参考リンク:
できるだけリスクの少ない土地活用を検討したい…という方は下記記事も参考に。土地活用には、空室リスクや金利上昇リスク、家賃下落リスクなど数多くのリスクがあります。このようなリスクの少ない土地活用を解説しています。
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