「住宅ローンが残っている家は、どうやって売却したらいいのかな?」
マイホームの売却を検討する場合、気になりますよね。住宅ローンが残っていても家の所有権はあなたのものです。
しかし、ローン付きの家には、所有権とは別に「抵当権」という権利があります。ローンが残っている家の売却には、この抵当権は避けて通れません。
住宅ローンの残っている家を売る際のポイントはこちらです。
- 抵当権を抹消しなければならない
- 住宅ローンを完済しなければ売れない
- 売却代金で完済してもよい
そこで今回は、住宅ローンが残っている家を売却する3つの方法を解説します。それぞれの特徴とメリット・デメリットを紹介しますので、よく確認して判断を間違えないようにしましょう。
住宅ローンが残っている家を売る条件
住宅ローンが残っている家は、自分の家であってもある条件を満たさないと売ることができません。銀行などの金融機関は、この抵当権があるから、何千万円ものお金を貸すことができるんです。
抵当権の設定された不動産を売却する場合、必ず抹消登記が必要になります。抵当権抹消登記なしに引き渡すと、違約金や損害賠償を請求される可能性もありますので、ご注意ください。
抵当権に関しては、下記記事で詳しく解説しています。
抵当権を抹消する
「抵当権」、ときどき耳にすることはあっても馴染みのない言葉ですよね。
家を建てる際には、その家を担保に金融機関で住宅ローンを組みませんでしたか。
銀行が融資の際に、不動産を担保にとることを「抵当権」といいます。
よくテレビドラマなどで「家を抵当に入れて」というセリフがありますが、「家を担保に入れて」と同じことであり、抵当権と住宅ローンはセットです。
どちらか片方を消すというケースは原則ありません。
つまり、抵当権を抹消するにはローンをゼロにしなければいけません。
住宅ローンを完済しなければ売れない
なぜ「抵当権」があるのかというと、住宅ローンを借りた人が返済できなくなった時に、銀行は家を処分することができるからです。
住宅ローンは何十年もかかって返済するものなので、銀行としては本当に最後まで返してくれるのか不安です。
もちろん、ローンがゼロになれば抵当権は無くなります。
でも、ローン返済の途中で家を売る場合、売主がいくら「これからの返済も大丈夫」と言っても、買主にとっては他人のローンの抵当権が付いたままの家なんて、いつ銀行に取り上げられるか心配で買いたくありませんよね。
そこで、家を売るときは抵当権を外す必要があるのです。
売却代金で完済してもよい
それでは、ローン返済が完了するまで家は売れないのでしょうか?
そんなことはありません。
売れたお金でローンを返済してしまえばいいのです。
ローンを全額返済することを完済といいます。
実務では家が売れる時にあらかじめ銀行に連絡しておいて、家が売れたお金でローンを完済すれば抵当権を外す書類がもらえるので、買主は安心して家を買うことができます。
- 抵当権を抹消する
- 住宅ローンを完済する
- 売却代金で完済してもよい
一般売却で住宅ローンが残っている家を売る
ここで問題があります。
もし売れたお金では住宅ローンを完済できず、借金が残ってしまった場合どうすればいいのでしょう。
ローンと抵当権はセットです。
ローンが1円でも残っていれば抵当権を外すことはできません。
一番現実的なのは、残ったローンを自己資金や家族からの援助などで完済することです。
また、銀行で無担保ローンを借りるという方法もあります。
利息はいくぶん高くなるかもしれませんが、抵当権なしでお金を用意できますので、家が売れたお金とあわせて住宅ローンを完済しましょう。
任意売却で住宅ローンが残っている家を売る
任意売却とは
「任意売却」とは、ローン返済が思うようにいかず滞納してしまったときに、銀行と相談して、ローンが残ってしまうけれど滞納が深刻になる前に市場価格で家を売ってしまうことです。
さきほどの「一般売却」は住み替えや転勤など前向きな理由で家を売るイメージですが、「任意売却」は売却の理由がまったく異なります。
任意売却はローン滞納が条件?
銀行はローンが滞納すると、契約上はその時点で全額返済を求めることができるものの、実務上、おおむね6回(6か月)まで滞納の猶予があります。
しかし、それを超えるとタイムリミットとなり、その後は家が差し押さえられて競売で強制的に家を売らなければなりません。
こうなってしまう前に、不動産業者などに相談して買手を見つけるのですが、一般的に都市圏以外でローン残高以上の値段で売却できることはなかなか難しいでしょう。
すると、たとえ売れてもローンが残ってしまいますから、任意売却にあたっては銀行の理解が必要です。
銀行にとっては担保がなくなってもローンが残ってしまうのですから、できるだけ現状のまま返済し続けてもらいたいのが本音でしょう。
任意売却の場合は、滞納の事実があった上で、納得できるやむを得ない明確な理由がないと銀行も相談に乗りにくいはずです。
任意売却のメリットとデメリット
任意売却のポイントは「事態が深刻になる前に通常の不動産取引で売却する」点です。
いっぽう、難しい問題として「すぐに買手が見つかるとは限らない点」と、「せっかく買手が見つかっても銀行等が了承できる値段でないと売れない」という点があります。
任意売却のメリット
任意売却は通常の不動産取引に基づくので、はた目には一般売却となにも変わりません。
強制立ち退きもありませんので建物引き渡しまでの期限も比較的余裕があります。
ご近所の方から見ても、なにも不自然には見えないことがメリットでしょう。
任意売却のデメリット
しかし、任意売却はあくまでも売り先があっての話です。
都市圏など比較的不動産の流通がある地域なら心配する必要はありませんが、そうでないところは買手が見つかりにくいかもしれません。
さらに「いくらで売れるのか」という問題があります。
さきほど”銀行「等」が了承できる値段”と申し上げました。
借入先が1つの銀行だけならよいのですが、住宅ローンの他にノンバンクなどからも抵当権付きの借入があった場合、そちらの抹消も必要となります。
抵当権には順位があって、もし物件が売れたら順位が先の債権者から弁済を受けます。順位が先の銀行がOKでも、他の債権者が同意しなければスムーズに売却できません。
また、連帯保証人がいる場合は保証人の承諾も必要です。
このような交渉を素人がまとめることは事実上不可能です。
不動産会社も専門は不動産仲介ですので、債権者の交渉まで請け負うことは少ないでしょう。
ローン滞納によりブラックリスト入りの可能性も!
実際にローン滞納になってしまうと、このような手続きで数か月かかるので信用情報機関のブラックリストにのる可能性があります。
一度ブラックリストに掲載されると、7~8年ほど金融機関から借入ができなくなります。もちろん、自動車ローンやクレジットカードも使えなくなる覚悟が必要でしょう。
任意売却のやり方
任意売却では、通常の不動産売却に加えて債権者の了承が必要でしたね。
もしかすると、債権者の協力を取り付けることの方が難しいかもしれません。
任意売却にあたっておすすめの方法は、まず弁護士に相談してから不動産業者にお願いすることです。
若干費用がかかりますが、モタモタしているうちに競売に追い込まれることを考えると一刻も早く弁護士に相談するべきです。
早期に解決できる可能性が高くなりますし、総コストで考えるとお得な方法です。
ただし、よく「任意売却専門・引っ越し代やキャッシュバックあり」と書かれた業者広告を見かけますが、問題が多い業者も少なくないので相談相手は慎重に選んでください。
また住宅支援機構(旧住宅金融公庫)のローンの場合、任意売却について比較的肯定的な姿勢を打ち出しており、※申請手順がありますのでそちらを参照してください。
参考 融資住宅等の任意売却:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)
競売で住宅ローンが残っている家を売る
競売とは
競売とは、ローンが6か月以上滞納して家が差し押さえられたあと、裁判所がオークションをかけて家を売却することです。
売却金額は銀行のローン返済に当てられます。
競売は淡々と事務処理のように手続きが取られます。
買主が競売で物件を手に入れたいと思っても、中を見ることもできませんし、どのような使い方がされたのかもわかりません。
裁判所の競売開始から締め切りまで期限もあり、競売への参加を検討する時間も限られます。
したがって、競売は任意売却よりかなり低い売却価格になるケースがほとんどです。家を手放した後も、たくさんのローンが残ってしまう可能性は高いでしょう。
競売のメリットとデメリット
売却価格が安いのは競売のデメリットですが、機械的に手続きが進むので簡便という意味ではメリットかもしれません。
しかし、競売となると物件が告示されるので、ご近所や勤務先などに広く知れ渡ってしまいます。手数料として、裁判所へ数十万円ほどの手数料を払わなくてはなりません。
任意売却と比べるとデメリットの多い売却方法といえます。
家の売却と抵当権抹消は不可分の関係
住宅ローンが残っている家を売却する方法として、「一般売却」「任意売却」「競売」の3つの方法を紹介しました。
ローンが返済できる場合とそうではない場合、どちらにしても「抵当権の抹消」は必ず解決しなければならない問題なので、銀行とよく相談してください。
また、返済が苦しくなったら、競売になってしまう前に早めに弁護士などに相談し、任意売却を検討することをおすすめします。
以上、住宅ローンが残っている家を売却する3つの方法…でした。
参考
住宅ローンが残っている不動産売却が得意な業者を探したい…という方は下記記事も参考に。一括査定サイトのなかには、ワケあり物件に強いサービスもありますよ。